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降光祭当日(1)


降光祭当日。


クラスは、浮かれる生徒とやさぐれる生徒に分かれていた。


「あーあ、めんどくせー。もう帰ろっかな~」


私の後ろの席で管をまくこの男も、もちろんやさぐれる組だ。

私の席に遊びに来ていたライシーがそんなタージェルに辛辣に言う。


「何も努力しなかったくせに、よく言うよ。あんたに女の子が自分から寄ってくるわけないんだから、自分から誘わなきゃだめでしょ」


 ライシーの言葉は的確にタージェルの心を抉り、彼はわっと泣く真似をして机に突っ伏した。


「だって、だって、俺が誘いたい女の子みんな彼氏いるんだもーん!」

「それはあんたの理想が高すぎなの」


 タージェルが好きになるのは、シャーリーみたいな目立つ美人ばかりだ。

 そう、シャーリーのことも一時期騒いでいた。彼氏ができたと噂がたってから、すぐに静かになったけれど。

 そもそもタージェルは、自分がイケメンじゃないから彼女ができないと思っているが、実は自分の性格に問題があることに気付いていない。


 私たちは彼を冷たい目で見た後、彼は無視することにして自分たちの話に戻った。


「マフルはどの場所指定された?私東棟のテラス席だった!」


 空を見る場所は、教師からそれぞれ指定される。

 それはバルコニーだったり、屋上だったり、中庭だったりと様々だが、どこに当たっても二人きりになれるよう工夫がされているらしい。


 ライシーの言葉に私は声を弾ませて答えた。


「えー、いい場所だね!あそこ狭いからライシーたちの貸切かな?私は屋上なんだけど、屋上って何組か使うんだよね?」

「そうだけど、天井が透明なテントが張ってあって、二人きりにはなれるらしいよ。去年屋上指定された子が言ってた」

「そうなんだ。テントに二人きりはテラスより緊張するかも…」

「たしかにそうだよね!付き合ってたらまた話は違うんだろうけどね」


 ここまで話して、ライシーは周りに聞こえないよう小声になる。


「マフル、今日告白するんでしょ?」

「そのつもり。どうしよ、緊張する」


 これまでの行動で私の好意はマルディー先輩にばれているが、想いをきちんと口に出して伝えたことはない。先輩からどんな答えが返ってくるか、想像するだけで胸がばくばくした。


「きっとうまくいくよ、自信もって!そうだ、お化粧しとく!?かなり印象変わると思うんだけど」


 そう言って自分のバッグからコスメポーチを取り出そうとするライシーを、慌てて私は制する。


「いい、いい、大丈夫!お化粧はしたくないの」

「そうなの?でもよく見るとマフルってほんと肌白い……眼鏡に目がいっちゃって普段あんまり意識しないけど、改めて見るときれいな目だし……」


 ライシーにまじまじと眺められて、私は彼女の視線から逃げるように下を向いた。

 ライシーには私が変装していることをいつか言いたいとは思っているけれど、今ここでばれるわけにはいかない。


 うつむく私を見て恥ずかしがっていると思ったのか、ライシーは話題を変えた。


「まあ、マフルがしたくないならいいか。そういえば聞いた?シャーリーさん、彼氏と別れたらしいよ」

「「ええっ!!」」


 突然のニュースに、私だけではなく後ろの席からも驚きの声があがる。


「まじで!?俺、ワンチャンいける!?今日は間に合わないとして、次の演劇祭とか――」

「残念でした。もう次がいるらしいってもっぱらの噂だよ」


 ばっさり切り捨てるライシーに、タージェルは絶望からふたたび机に突っ伏した。

 次、というのは、もしかしなくともセフィードだろうか?この間シャーリーから誘われたって言ってたし…。


 私が“次”についてライシーに聞いてみようとしたところで、教師が教室に入ってくる。


「お前ら、そろそろ時間だぞ。居残り組以外は移動しろー。居残り組も、腐ってないで出店でも行って楽しんで来い」


 お祭りと名がつくだけあって、軽く食べられるものや飲み物が買えるお店も、いくつか出店しているのだ。

 教師の言葉に、私たちはめいめい動き出し、結局シャーリーの相手については聞けなかった。

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