シャーリーの素顔
◆◆◆
運動の授業後、シャーリーは校舎の端にある空き教室に自分の取り巻きを呼び出していた。
イライラしながら一人待つシャーリーの居る教室に、二人の女生徒が慌ただしく駆け込んでくる。
「ごめんなさい、遅くなってしまって!」
「遅いっつの」
普段のシャーリーを知る人間であれば度肝を抜くであろうその言葉遣いにも、この二人の女生徒は驚く様子がない。とにかくシャーリーにペコペコと謝っていた。
「あーもう、そういうのいいから。お前ら、マフル・ハーシェって知ってんの?」
鋭い目線で尋ねるシャーリーに、二人の女生徒は顔を見合わせたあと、同じタイミングで首を横に振った。
「いえ、知らないです。……何かあったんですか?」
「あったも何も……あーまじでイラつく!」
シャーリーはどすんと椅子に腰をおろし、片方の手で頬杖をついて、もう片方の手の指で机をたたく。
「今頃セフィードから降光祭に誘われてる計画だったのに…どこで狂った?」
そう、ここまではシャーリーの計画通りだった。
彼氏を作ったのは、偏にセフィードに近づくため。
セフィードの周りは、セフィードを恋人にしたい女子ばかり。その中に自分を恋愛対象として見ない美女がいれば、目立つし気になるはずなのだ。
しかもおそらくセフィードは人のものであればあるほど欲しくなるタイプだと思ったのもある。
また、席についても裏工作を行なった。
ありきたりだが、席決めの際この取り巻き二人を使ってセフィードの近くの席を調べ、その席にあたった女子に席の交換を持ち掛けたのだ。
席が近いことで話しかける理由ができ、さらにセフィードと自然に仲良くなることができた。
見目の良いセフィードとシャーリーが仲良くしているのを見れば他の有象無象は近づきがたくなる。そんな効果も狙った。
彼の専攻する植物学科に彼を狙う女が入らないよう、学科選択の際に彼の専攻に関する嘘の噂を流したりもした。
ちなみに自分も植物学科を選択したかったが、親に音楽関連の学科を選択するよう厳命されていたため、それだけは叶わなかった。
これらの努力のかいあって、かなり良い雰囲気にはなれていたんじゃないかと思う。
あと1年もせずに卒業、というこのタイミングで、シャーリーを好きになったセフィードは必ず降光祭に誘ってくるはずだと考えていたのだ。
なのに。
まさか、自分の知らないところで仲良くなっている女生徒がいたとは。
しかもよりによって、相手はあんなもっさい顔した女子。
マフルの方はセフィードに興味がなさそうだが(それもまたなぜか腹が立つが)、計画通りすすまないのはセフィードがマフルと仲良くなったせいである気がしてならない。
「そのマフルって子が何か……?」
シャーリーのイライラにおびえてか、びくびく尋ねる取り巻きの女生徒たちにシャーリーはちっと舌打ちをして答える。
「とりあえず、計画変更。こっちから攻める」
シャーリーの言葉に取り巻き二人はほっとしたように息をついた。
マフルをいじめるように言われたらどうしようかと思っていたのだ。
そう、このシャーリー嬢、とんでもなく腹黒だが、悪い人間ではなかった。
だから取り巻きもおびえつつ彼女に付いてまわっていたりする。
「シャーリー様からお誘いするってことですね」
「がんばってください……!」
二人に応援され、シャーリーはりりしい顔つきで頷いてみせた。
◆◆◆




