シャーリーを調査する(1)
休み明けの最初の日、私はシャーリーさんの情報を得るべく調査を開始した。
ちょうどこの日はクラス合同授業で、男女に分かれて運動を行なう日だった。
いくつかのグループに分かれてそれぞれ違うスポーツをすることになったのだが、私はシャーリーさんが何を選ぶか見て、彼女と同じものを選択する。
「えっ、マフルが器械体操!?大丈夫なの?」
「やめなよ、私たちと球技やろ?」
私の体のかたさを心配するクラスメイト達が驚きの声をあげるが、そもそも私は運動全般が苦手なのだ。正直何を選んでもあまり変わらない。
私がぐっと親指を立てて、「何事も挑戦だよ!」というと、なぜかいたく感動された。
気を取り直して、器械体操を行なうグループのもとへ向かう。
シャーリーさんはすでに柔軟を始めていた。
近くで見ると、匂い立つような美人だ。
アーモンド形の目のまわりを長いまつげが縁取っていて、眉も美しい弓型を描いている。
しかも、動きのひとつひとつが繊細で上品だった。
思わず見惚れたあと、はっと我に返ってシャーリーさんの傍に寄る。
「えっと、ここいいかな?」
「どうぞ」
私が尋ねると、シャーリーさんはにこやかに答えてくれた。
ありがたくシャーリーさんの横に陣取って、同じように柔軟を始めながら彼女に話しかける。
「えっと、シャーリー・アストンさんだよね?」
「ええ、そうよ。ごめんなさい、あなたは?」
「あ、マフル・ハーシェです、よろしくね。シャーリーさんとお話してみたかったの」
「あら、光栄だわ。シャーリーでいいわよ、マフルさん」
「私のこともマフルで大丈夫」
第一印象は完璧だ。それに優しい。セフィードはとんでもなくレベルの高い人を好きになったな、と少し遠い目になった。
「シャーリーって、たしか彼氏いるよね?一時期すごく噂になってた」
「ええ?噂ってどんな?」
困ったように笑いながら言う彼女に、同じく笑いながら返す。
「シャーリーはうちの学年の男子の憧れの的だから、そんな人の彼氏はどんなだろうってみんな話してたよ。たしか同じ学年のカーフェくんだよね?」
「ええ、そうよ。噂になってたなんてなんだか恥ずかしいわ」
カーフェくんも、なかなか見目が整っている男子だ。
物静かでいつも微笑んでいるイメージがある。
シャーリーと並んだらきっとお似合いだろう。
「いいなあ、羨ましい。私はまだまだ卒業が遠そうだから、参考にさせてほしくて。どっちから告白したか、とか聞いてもいいかな……?」
半分本気、半分調査のために、少し突っ込んだことを聞いてみる。
すると彼女は恥じらいつつも答えてくれた。
「向こうからよ」
「そうなんだ!シャーリーも彼のこと好きだったの?」
「うーん、どうだったかしら……」
曖昧に笑って答えるシャーリーに、この質問には答えたくない雰囲気を察して私は慌てて取り繕った。
「ごめんね、突然こんなことを聞いて。私も今度好きな人と降光祭に参加できることになったからがんばってみるね!」
「あら素敵。相手はどんな方なの?」
私の話に目をきらきらさせてくれるシャーリーさんに、照れながら答えた。
「えっと、1個上の先輩で、まだ知り合ったばかりなんだ。だからシャーリーには遠く及ばないよ」
「でも、降光祭には一緒に参加してくれるんでしょう?それって悪くないと思うわ」
「そう思う?」
「ええ」
シャーリーににっこり笑ってお墨付きをもらうと、本当にうまくいくような気がしてきて嬉しくなる。
私は明るく尋ねた。
「シャーリーも、彼氏さんと参加するんだよね?」
しかし、私の言葉に彼女は答えることなく微笑む。
あれ、もしかして…もしかしなくとも、彼氏とうまくいってないのだろうか?
非常に気になるが、おそらく何を聞いても彼女は答えてくれないだろう。
私はわざと明るい調子で話題を変えることにした。




