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ハイキングスタート

 

 ハイキングに行く日はすぐにやってきた。

 

 家で所有する馬車に乗って、ギャラレー山へ向かう。


「ねえセタル、おかしいところはない?」

「大丈夫ですよ、お嬢様。大変かわいらしいです」


 私が無事に着くか確認するためについてきてくれた侍女に尋ねると、彼女セタルはにっこり笑って答えてくれた。


 ライシーが見繕ってくれたのは、最近流行りの膝丈ワンピースにヒールのないブーツ。

 スカートの中に独自に作られたズボン型のパニエをつけているため、万が一動きすぎてもパンツが見えることはない。

 乗馬服のような格好で行こうと思っていた私からすれば、これはたしかに“動きやすくてもかわいい服”そのものだった。



「でも、張り切りすぎだって思われないかな」


 制服はふくらはぎまでの長さがあるスカートだし、家ではさらに長い、足首が隠れるほどのロングスカートしか履かない私にとって、この短さは大冒険だ。

 そわそわ裾を直す私に、セタルはバッサリと言い切る。


「思いません。むしろその暑苦しいカツラと眼鏡を取ってしまってもいいくらいです」

「それは駄目」


 私は言って、黒いおさげ髪とその上にかぶった帽子をしっかりかぶりなおした。

 やがて馬車はギャラレー山の麓に到着する。

 

 馬車の窓から外を見ると、すでにマルディー先輩とセフィードが談笑しながら待っていた。


「では、行ってらっしゃいませ、マフル様。我々一同応援しております」

「重いってば。行ってきます」


 入学して1年とちょっと、やっと浮いた話が出てきた私に、家族はもちろん使用人たちまで一緒になって喜んでいたのを遠い目で思い出しながら、馬車を降りる。


 

 最初に私に気付いたのはセフィードだった。


 私を見て、軽く片手を挙げる。セフィードのその様子を見て、マルディー先輩もこっちを見て手を振ってくれた。


 私は二人に駆け寄り、頭を下げる。


「おはようございます、遅くなってごめんなさい!」

「おはよう!大丈夫、時間ぴったりだよ」


 笑ってそう言ってくれる先輩に、心がふわっと軽くなった。

 先輩は時計を見ながらこう続ける。


「今から行けば、収集をしながらでもちょうどお昼くらいに開けたところに着けると思う!そこで昼食を食べよう」

「あ、私、昼食持ってきました!」


 手に持っていたかごを揺らして見せる。

 するとすかさずセフィードがすっと私の傍によってきて囁いた。


「当然手作りだろうな?」

「えっ?うちのシェフが作ったけど」


 うちのお抱えのシェフの料理は絶品だ。ぜひ二人にその味を知ってほしくて、あれもこれもと注文したらかなり量が多くなってしまった。


 しかし私の答えを聞いたセフィードはあからさまにため息をついて片手で顔を覆う。


「いや、そこは普通手作りだろ」

「そうなの?だって私料理したことない」

「それでもシェフに手伝ってもらって、一品くらいは作ってこいよ。アピールになるだろ」


 なるほど、思いもつかなかった。

 感心する私に、あきれるセフィード。

 そんな私たちを見てマルディー先輩が首をかしげる。


「二人とも、どうかした?」

「いえ、大丈夫です。行きましょう……それ、貸せ」

「わっ」


 セフィードは私が持っていたかごを奪うと、すっと一人離れ、先陣を切って歩き出した。


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