7話 襲撃
翌朝、バスティの部屋に、木窓の隙間から差し込むひと筋の光。
(え?……僕、シんだ……??)
「(確か、特訓してて……)いっ、テテテ!」
全身の激痛で目が覚める。
「これって……」
慌てて窓を開け、外の様子を確認する。
「やった〜!晴れてるぅ!」
昨日行けなかった温泉に浸かり、身体の疲れを癒せる。
そして昼に着く東半島への定期船に乗り、このユマージォ島を後にする。
独特の文化を気に入り名残り惜しいが、あの特訓から解放される喜びが勝った。
鼻歌交じりに身支度を整えていると、街中にけたたましい鐘が響く——
カンカンカン!!!カンカンカン!!!
「お客さん!避難して!」
宿屋の主人の声が響く。
慌てて廊下に出ると、ちょうどルイーナとばったり。
「荷物まとめて!とりあえず外よ!」
幸い荷解きはしておらず、背負うだけだ。
バタバタと玄関まで走ると、背中越しに声がかかる。
「お客さん!……お代!」
今日はチェックアウトの日だ。
バスティは2人分の宿代を支払いながら、店主が教えてくれた情報を頭に入れた。
「お世話になりました!……ルイーナ、行こう!」
外は大勢の人で溢れている。
「郊外の砦が避難場所だって!」
バスティは走りながら、先ほどの情報をルイーナに伝える。
「魔族が時々襲ってくるんだって!その時はいつもこうしてるんだって!」
「砦ってどこなの……とりあえず、みんなに付いて行きましょ!」
観光客も住民も団子状態で街を駆け抜ける。
「うわあ!」「に、逃げろ!」「ヒャッハー!」「助けて!」
大混乱の叫び声と奇声が飛び交う!
「ねぇ!僕達は魔族から逃げてて、あの人達は何から逃げてるんだっけ!?」
「よそ見しないで走るのよ!引っ張られるのは上着だけでいいの!」
背中に隠れるルイーナに裾を掴まれながら、こんな時こそ周囲の声に惑わされるな、現実に戻って来い、と言われている気がした——
市街地を抜けると荒野に出た。
そこで目にした光景は、魔族の大群と国防魔法砲撃隊が、まさに交戦中の場面だった。
その間に、米粒ほどに見えている建物に一般人を避難させるようだ。
次々と脇を駆け抜けて行く避難集団。
遠距離から魔力の弾丸を浴びせているが、キリがない様子。
これではいつか魔族に追いつかれてしまいそうだ。
「ハァ、ハァ……まだ先か……え?ちょちょちょっ!?」
グイッと身体が傾き、集団から逸れていくバスティ。
「こっち!こっち〜!」
ルイーナが裾で操縦しているのだ。
ちょうど魔法隊の側面、はっきり言って、邪魔な位置だ!
「あっつ!」
火炎玉の余熱が伝わる。
「ここから加勢するわよ!……あなたが!」
「えっ!?ムリムリムリ!棒しか無いし!」
「棒が“有る”じゃない!昨日の成果を見せるのよ!」
ルイーナはそう言いながら、相棒の背中から荷物を降ろす。
「おめでとうバスティ、ここが荒れ地なのがあなたの勝因よ!」
地面には無数の石が転がっている。
「重っ……いい?ここで止めないと……」
よいしょっ、と荷物を担ぎながら言葉を続ける。
「……女神さまの危機よ♡」
「……めがみさま?……きき……よ?」
復唱するバスティの目がなにやら虚ろだ。
幾度となく刷り込まれた座学……
「あとで砦で合流ね……じゃ!」
主人は避難集団の中に混ざって行った。
残された従者に魔族の大群が迫る——
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