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ヴォルダーノ【番外編】  作者: 謎人
ユマージォ島 編

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3/9

  3話 本屋

「観光客の人達、みんな同じ本持ってない?」


 宿屋を探しつつ街を見て回ると、ルイーナはある違和感を覚えた。


 ユマージォ島のガイドブックとは明らかに別の、重厚な雰囲気の表紙だ。

 表情は一様に、純粋な少年少女そのものだ。



 どこか懐かしさを漂わせる一軒の本屋の前に差し掛かると、一角に大勢の人々が群がっている。

 客層は子供が比較的多め、親にせがんでいるのだろうか?

 いや、大人もこぞって手を伸ばしている。

 


 2人の道中に読書は欠かせなかった。

 旅といっても、常に壮大な何かが起こるわけでは無い。馬車で回し読みしている方が多いし、好きな時間だ。



「あそこで売ってるのかな?」


「きっとそうよ、みんな抱えて出てくるわ!」


 寄る?寄らない?

 ……示し合わせる必要も無く、2人は自然にその輪の方へ歩き出していた。



 輪の中心に現れたのは、ユマージォ島で数十年もの間爆売れし続けている、超ロングセラーの2冊だ。

 どちらも、遥か遠方にあるともないともされる、幻の国を題材にした書籍だそうだ。



【ミムメッショヴ】——

 “実在した伝説秘技集”としてまとめただけでなく、多角的な切り口でその成り立ちを深掘りする、との紹介文だ。

 表紙には何かの記号だろうか?

 ”鬼“?“斗”?……を合わせたような一文字が記されている。

 なんのことかは解らないが、本文内容は翻訳されており、誰にでも読めるようだ。


【ユディリーロ】——

 “複合的な伝達力学”として人間の限界への可能性を探求し、筆者そのものが概念、との紹介文だ。

 表紙には直筆サインだろうか?

 ”NKを円で囲んだもの“が記されている。

 こちらもなんのことかはさっぱり解らないか、しっかりと翻訳されていている。



「バスティ、この本屋……”当たり“ね」


「だね!」


 即決だった。


 直感?経験則?理屈じゃない……読まなきゃ人生の楽しみを半分放棄するのと同義、そんな気がした。


「間違いないわ!この本屋には、他にも掘り出し物があるはず!」


 目を輝かせるルイーナに応えるように、バスティはその言葉に続く。


「うん、片っ端からチェックしよう」



 時間を忘れて思い思いに店内を見て回るうちに、ルイーナはなにやら不思議な感覚に襲われた。


 初めて見た背表紙の列、初めて入った書店の匂い、初めて訪れた島の風景。

 なのに、どこか懐かしいような……



 親の顔も産まれた場所も覚えていない。


 物心ついた時にはマシルスにいて、同じような境遇の者達と育ったのだ。

 とりわけ彼女は新生児で保護されており、俗世との接点は、買い出しの為にいつもの街に出る程度。



 なのに、ここではまるで自分の幼少期が思い出されるような……


 もしも平和な世の中ならば、このように過ごしていたのだろうか。


 そんな雰囲気に包まれているようだ。


 おそらくバスティも、そのように感じているのだろう——


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