後編
☆☆☆150年後、聖王国教会
サウス王国は、その後、民は全て、四族連合軍により殺害されました。
聖女の一族だったルイーサと、公爵家一族郎党は女神様の加護があり。魅了にかからなかったのです。
ルイーサ様は、当時の転移聖女、オサヨにより、パーフェクトヒールを掛けられ、全快しましたが、生涯、亡きサウス王国国民のために、元王国に一人残り、祈り続けたと言います。
100年間は、サウス王国は禁足地とされましたが、魅了反応が無いと確認されてから
ノース王国の王族に割譲され、開拓民と共に、ファミル王国が誕生しました。
さて、これほど、魅了とは危険なのです。
魔族ですら、即座に人族と和平をして、討伐するものなのです。
親の敵でも、手をつなぎ。
魅了持ちの抹殺に協力するのがこの世界の常識です。
魅了持ちは年老いた老婆でも、何もしなくても、美青年が言い寄ってきます。
どのような醜男でも美女が傅きます。
リリムの首は、研究の後に、山奥に結界を張られ封印されました。
「さて、今世の転移聖女セイコ様、また、魅了持ちが現われたら、魅了がかからない転生者殿に、先頭に立って討伐して頂きます」
「わかりました。法王様」
彼女は転移前、平民、商会で事務方をしていたと言うが、魔力は随一。
・・・さて、どうなるのかのう。
☆☆☆ファミル王国女神教会付孤児院
「・・・ということが150年前のサウス王国魅了災害のあらましです。そして、今日は1日で滅びたサウス王国の日、10万人の冥福をお祈りしましょう」
「・・・こわいよ。そう言えば、マリちゃん。可愛くないのに、皆に好かれてるよ」
「それはマリちゃん器量よしだからでしょう!私たちも大好きよ!」
・・・フフフフフ、公開されている話はここまでか。
なら、また、王道楽土の建設ができる。
今度は私が、一気呵成に中央国家の宮廷に入り込む。
今の姿は孤児メアリーだ。
私は幸福の女神ハピアだ。神だ。地上は、神々の協定で直接的な手助けは禁じられている。
女神、魔神、森神、大精霊、酒神、それぞれ愛し子を通して、それぞれの眷属を助けている。
私は常々不思議に思っていたものだ。
さっさと地上に降りて、神を崇めさせれば、皆、幸せになれる。
人間はどんなに、豊かになっても、異性から好かれても、不幸を感じる者がいる。
いろいろ実験をしたが、人間は何かを熱狂的に崇拝しているときこそ幸福であり。
人も、魔族も、エルフも、ドワーフも、同じ唯一神を熱狂的に崇拝すれば幸せになれるとわかった。
勿論、その神は私で無くてもいい。人間でも良いのだ。
サウス王国の実験では、民は末期、飢餓状態だったが、聖女様を崇めて、幸せであったではないか?
食料を輸出してまで、女コジキに贈るために、城一つの価値がある指輪を購入したではないか?
あの女は無学な女コジキだった。
あそこまで、酷い状態でも人は幸福を感じることができるのだ。
私なら、もっと上手くやれる。
「で、まだ、お話の続きがありますわ。実は、この魅了災害の元凶と思われた女コジキの後ろには、黒幕がいたのです。
皆様、これから話す内容は、今は意味がわからなくても、大人になったら、わかるから、胸にしまっておくのよ」
「「「はーい」」」
・・・???何だ?まあ、聞こうか。
☆☆☆150年前サウス王国
「アアアアアアアアアーーーー、我の目をえぐり、腕を斬り、足の腱を斬ってくれ!勇者殿、我を無残に殺してくれーーーー」
「え、やだよ。切腹の介錯はしてやるから」
「民は?民は欺されていただけだ!頼む。我はどうなっても良い。だから、頼む!」
「無理だ。民は根切りと決まった。この魅了は伝染するタイプのものだ。残り香があると厄介だからと。城門につるされているお姫様以外殺せだと、戦争って理不尽で無慈悲だ。白虎隊も可哀想だったな。それ」
パスン!
ポロン。コロコロと王子の首は転がる。
ペンペン、テケペンペン~~~
お小夜が、鎮魂の曲をひいた。
「切ないね~」
☆その日の夜、旧サウス王国王城前広場
「おい、お前、従軍魔導師か?ここは立入り禁止だ」
「え、そうなの?」
「知らないのか?リリムの首と遺体は、実験することになった。移送の準備ができるまで、魔法遮断が施された箱にしまわれている。今、王城前広場の中央におかれている。
耐性の無い者は危険だ。魔導師ならわかるだ・・・」
ドタン!
見張りの兵士二人は倒れた。
「フフフフ、私が植え込んだ魅了の種を回収しなければね。あれには10万人分の熱狂が詰まっている。今度はうまくやれそうだ」
無詠唱のスリープでねむらされた兵士の体が突然、光る、まるで警告を発するかのように、青い光の柱が天たかく、放たれた。
「!これは、ゴーレム、人間どもめ。こんな精巧なもの作れたのか?しまった」
・・・そして、この魔導師は幸福の女神ハピアでした。いえ。邪神ハピアは転移魔法で、急行した勇者様たち、法王様、四本角(魔王)に取り囲まれました。
「ヒィ、お助けを~、そうだ。靴を舐めます。どうか、お助けを~」
邪神は、犬のように、這いつくばり、法王様の靴をペロペロ舐めました。
「フォフォフォフォ、浅ましいのう、女神様の忠実な下僕である私の靴を舐めるとは、貴様は神だろ?ええい。信徒の献金で買った大事な靴、貴様の舌だと汚れるわ!」
バン!と邪神の顔を蹴り上げました。
まるで、カエルのように、無様にノビタ邪神は、土下座をして命乞いを始めました。
「ヒィ、女神様や魔神様に遠く及ばない私めでございます。偉大な人間様、どうか存在だけは消さないで下さい!」
「ダメじゃな」
それでも、許されないとわかると・・・
スカートを自らめくり、パンツを下げ。
勇者ヘイゾウ様と法王猊下、四本角にお尻を突き出しました。
「「「???????意味わからないよー」」」
「シスターが大人になったら理解出来るといったでしょう。男子、聞くのよ!」
「フフフフ、わからないのが正常よ」
孤児たちの年齢ではこの話はわからない。
(違う。私はそんなことはしていない。人間め、事実を歪曲しやがって!)
邪神は尻を振りながら懇願します。
「ぶっ込んでくれよ。その太いたくましい棒をぶっ込んで、神とヤレる貴重なチャンスだよ。私は生涯、貴方たちの肉便器になります!だから、消滅させないでぇエエエエエーーー」
ぺぺン♪
「・・・最低ね。王子は、死ぬ間際まで民の命乞いをしたのに、神なのに、人未満ね」
聖女オサヨ様はたいそう呆れましたが、同性の指摘にも、邪神の命乞いは止まりません。
「ヒィ、私は最低です。最低神です。最低神とお呼び下さい!どうか、御慈悲をーーーーーー人間様。魔族様!」
プルプル(違う。本当はそうじゃない)
それで、惨めな邪神は最低神と名前を変えることで、かろうじて、封印を受けることで、存在を許されました。
今も、旧サウス王国王城前の最低神の封印場所を記す最低神の石碑に、男子は、立小便をすることが慣例になっています。
【違うぞ!人間め。そこまでして、私を陥れたいか?浅ましい。事実を歪曲するな!お前らに、神を殺せる術を持たないから、私を封印したのだろうが!それも、神の手助けを受けて、やっとじゃないか!】
一人の少女が、シスターの話を遮って、叫んだ!
「あら、元気な子ね」
「メアリーちゃん。どうしちゃったの?」
お話をしていたシスターは、ハピアの仮の姿メアリーに問いかける。
「まあ、そうなのですね。実際は、どうだったのかしら」
「はあ、はあ、はあ、事実は、あれから、女神の犬三匹と魔神の使い走りと、戦った!我が圧倒的に有利だったぞ!」
・・・
「はあ、はあ、だめだ。酒呑童子、こいつ、俺の抜刀を受け付けない!」
「ああ、俺の闇魔法もすり抜ける!」
ペペン!
「私の音曲もはねのける」
「フォフォフォ、奴は神だ。私の聖魔法は、そもそも効かないのう・・祈るしかないのう・・女神様・・」
「アハハハハハハハ~人間ぶぜいが~神に勝てるハズはなかろう、あれ・・動けない」
幸福神の右肩に、女性の手が、左肩に、褐色の男の手で押さえつけられていた。
それぞれ、女の手は光輝く空間から、手だけ出ており。男の手は、黒く闇が漏れる空間から出ていた。
「・・女神と魔神が、何故、地上に、現われている!協定違反だぞ!」
「お前が言うか!眷属の手助けはセーフ!」
「だから、手だけを、地上に顕現したのよ。貴女に言う資格はございません」
「なんじゃそりゃーー」
「手だけだから、封印がやっとね」
地上に、魔方陣が浮かび上がり、幸福神ハピアは、足から地上に埋まっていく。
「女神様、有難うございます!」
「聞け。我が眷属と、魔族の長よ。女神ハピアを150年間封印した。奴が改心して、善神になればそれでよし。後は奉るかどうかも好きにするがよい。
もし、地上に留まり、悪神のままならば、汝、人族に、討伐する能力を授けよう・・」
「「「ハハー、女神様!」」」
「魔神様、俺には何か、無いのかよ!」
「ああ、頑張れ~モンザエモン、この借りはダークエルフの奉納の舞でいいぞ、よろしく」
「え、それだけ?一族の指針とかは?」
法王と魔王は顔を見合わせ。
「何か、戦うのは馬鹿らしくなったのう」
「ああ、争いを無くすのは無理だが、族滅戦争はやめようぜ。じゃないとサウスの奴ら、浮かばれねえ」
・・・
「奴らが、勝手に争いをやめ、・・・」
(しまった。正体が、バレた。どうやって、誤魔化す!)
「まあ、メアリーちゃんのお話、面白いわ。だけど、女神暦は、女神様が最後に地上に現われた年から始まっているのよ。
手だけでも顕現されたのなら、また、暦が1から始まるわね。
大変、面白いお話でしたね。将来、作家さんになるのかな?」
「シスター、ごめんなさい!つい、勝手にお話を作りました。あれ」
気が付くと、周りに孤児はいない。聞き役のシスターだけだ。
転移魔法で逃げるか?
また、どこかの孤児院に潜り込み。力を蓄えればいい。
封印が解けたばかりで、体が小さい。
と思ったが、出来ない!何故だ。
私は幸福の神、聖なる属性の私なら、教会で魔法は使えるハズ。
「なら、メアリーちゃん。私のお話も聞いてくれないかな~」
☆☆☆サウス王国150年前
公爵家の少女が、朝のお着替えで、平民の服を着せられました。
目の前には、少女のドレスを着た。遊び相手の同い年の乳母の子がいました。
「あれ、アンリがどうして、私の服を着ているの?」
「末姫様、今日は、平民なりきりごっごの日です。姫様は、アンリと役割を交換し、お使いに行って頂きます」
「そうなの?でも・・・今日は、街騒がしいわ。一番上のお姉様も数ヶ月帰って来ない」
「さあ、時間がありません。お使いに行きましょう」
「あれ、お父様、お母様、お兄様たち、お姉様がたと、伯父様、伯母様と、騎士様たちと使用人たち・・見送りしてくれるの」
「トルーサよ、お使いにいっておいで、初めてのお使いだから、皆、見送るのよ」
「お母様、わかったわ。皆、有難う。お使いきちんとやるわ」
少女は粗末な荷馬車に乗せられて行きました。彼らは荷馬車が、視界から外れるまで見送ると、戦支度をします。
「アンリ、すまない・・身代わりを申し出てくれて、感謝する」
「フフフ、公爵様、私、姫様のドレス着られて嬉しい」
「トルーサよ。ボーア公爵家の血筋を、頼むぞ」
少女は粗末な荷馬車に乗せられ、そのまま国境を越え、ノース王国の親戚の家に預かりとなりました。
・・・それから、戦役が終わり、全ての事実を知った少女は唯一の家族、ルイーサの元に行こうとしましたが、
禁足地は100年続いたので、生涯会えることはありませんでした。
そして決意します。
結婚し、女の子が生まれたら、ルイーサの名を付けて、ある役割を課すことにしました。
そう、この話を5歳の女神詣での時に子供たちに話し、邪神を探す役割の長。
150年後まで、口伝で伝えて、何が何でも、元凶の神を見つけ、一泡吹かせる。
人族は女神ハピアの名を、書物にも残さずに口伝とし、この話を知る子供を探すことにした。
「丁度、150年ぴったりで現われるとは、こらえ性のない神よ」
「クソ人間!神を出し抜いたつもりか?お前なんか簡単に殺せる!」
「ええ、出し抜きました。ボーア公爵家の積年の悲願と、サウス王国民の無念、晴らす手伝いをしました。お前を消滅させるのは、私ではない!」
「人間ぶぜいなど、ゴミ同然!今の我でもお前くらい殺せる!」
女神ハピアが、魔法の力で、心臓を止めると、ルイーサは、微笑みながら死んでいった。
「な、何だ。早くここを出ないと!・・・この女のペンダントが光っている!どこかに連絡したな。それに・・転移魔法反応を多数感じる!」
ザザザザザザッ
規則正しい足音が、教会の外から聞こえる。
聖王国から、転移魔法で、教会の外に現われた聖女と聖騎士たちである。
ドカーン!
爆裂魔法で、扉が吹き飛ばし、中に入る。
入ってきたのは、今世の転移聖女セイコを筆頭に、聖騎士、聖女の数十人からなる集団である。
「シスタールイーサ殿・・・対象児童は?・・何と、もう亡くなられている。この少女が邪神である可能性大」
「聖女セイコ様、水晶探知魔道具に、感あり、邪神の魔素反応と一致しました。この少女を邪神ハピアと断定します」
「そ、これが、邪神ね」
「な、何だ。人間ぶぜいが、聖魔法が通用しないのは、150年前に証明済みだ!」
だが、ハピアの体は動かない。
そして、気が付く。体から、黒いもやで出ている。
「な、何だよ。私の体は、邪神になってるじゃないか?私は幸福の女神だぞ!」
不幸神になってしまった。実験をやり過ぎたか。だからか。聖なる者が怖い!
聖魔法で消される!
女神の言っていた『汝、人族に、討伐する能力を授けよう』
とはこいつのことか?
「結界を張り終えました」
「人払い完了」
「「「さあ、セイコ様、心置きなくお願いします」」」
「ええ、人類史上、初の神殺しをするわ。しょぼい神ですけどね」
セイコは、邪神の額に、手を当て
「これから、聖魔法の飽和攻撃をします。最期に何かいうことはありますか?」
「ウガ、ウガ」
怖い。もしかして、あの公爵令嬢も、こんな気持ちだったのか?それでも王子を諫めていたのか?
「そ、『ウガウガ』ね。邪神ハピアの最期の言葉として、公式記録に残して下さい」
「はい、畏まりました」
強い光が発生し、邪神ハピアは、存在を消滅させた。
・・バカな神、人間は確かに、神に劣るけど、してやられたら、改善をする能力がある。
きっと、今、どこの国の宮廷に行っても、魅了対策魔道具で、すぐに正体がバレたでしょうけどもね。
「さあ、皆様、今日は、サウス王国魅了災害の日です。祈りましょう」
「「「はい、聖女様!」」」
ハピアの名は、穢れ神として、書物に記されることはなく、存在そのものが無かったことにされた。
知っているのは、法王、各国の王太子教育や、王妃教育で口伝とされる。
何故なら
「魅了の残り香を遺伝している者がいる・・・それを全て殺すのは得策ではないし不可能だ。下手にこの話を広めたら、一人の魅了持ちを殺すために、1,000人のただの魅力的な人を殺すことになるわね」
ルイーサの名を継承したシスターは、微笑みながら戦死したと伝えられる。
最後までお読み頂き有難うございました。