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颯爽

咲さんはあの食べさせ方をさせてくれなかった。


けど、なぜか介護のように俺の口に食べ物を運ぶ。

咲さんはそれが嬉しいのか普段より柔らかい表情をしている気がする。


死なない程度にはご飯を食べさせてもらってるから、いいかと思っていると最後の一口は咲さんが食べてしまった。


咲「ご馳走さまでした。」


凌太「…ご馳走さまです。」


咲「今日から鈍った体を叩き直していくわよ。」


凌太「はい。」


俺は咲さんに連れてかれるまま、稽古場と書かれた大きな体育館の裏に連れて行かれる。


その裏にはゴツゴツとした岩肌が小さい山を作り雪で湿っていた。


咲「登って。」


凌太「命綱無しですか?」


咲「命は惜しくないんでしょ。」


そんなこと言った覚えがないが、冗談を言ってるようにも聞こえないので雪が1番積もっている場所から登ることにした。


ただでさえこの冬の寒さで手がかじかんでいるのに、岩からの痛い冷気が俺の指を凍てつかせる。


咲「遅い。」


俺の耳元で咲さんの声が聞こえ、目線をそちらに向けると咲さんが足だけで体制を安定させて立っていた。


凌太「え…?」


咲「習ったものを使わないでどうするの?」


そのまま軽い足取りで数㎝しかない足場を一寸の狂いもなく飛んでいき、あっという間にいただきに立つ咲さん。


俺は咲さんに言われた通り、習得させてもらった自我穿通で自分の体の体温を高め、力一杯踏み切ると自力で登った距離の2倍をすんなりと超えた。


咲「左。」


俺は咲さんが指示を出す足で岩肌を踏みつけて飛び登る。

するとあっという間に咲さんがいる頂につくことが出来た。


咲「うまく使えてる。」


凌太「ありがとうございます。」


咲「あとは持久力。今から日が暮れるまで走り込んで。」


凌太「今からですか?」


咲「早く。」


今、昼前なんだけどな…。


俺は咲さんに手を引かれ、頂から飛び降りて雪の上で着地する。


咲「下は走りにくいから上ね。」


と言って、屋根上を指す咲さん。


凌太「分かりました。」


俺はさっきの跳躍で屋根上に登り、まずは雪かきをして足場を整えてから走り始める。

その間、咲さんは屋根の端で立ったまま俺の走りを見るだけでその時間は終わった。


これを毎日のようにやって晩まで息が切れない体になることには夏が来ていた。


夏の暑い日差しが照りつけても咲さんは一滴も汗をかかず、俺に定期的に水をくれる。

その水は咲さんの口で冷えた水でとても美味しかった。


咲「今度、私が担当してる地域で凶妖が動いたら一緒に行きましょう。」


凌太「分かりました。」


この半年間、一度も凶妖狩りの戦いにも地域の見回りも連れて行ってもらわなかった。


俺のあとに入ってきた団員たちはみんな早い段階から行かせてもらっていたのを見て、俺は不服に思っていたがやっとこの時が来た。


俺はそのことが嬉しくて久しぶりに長風呂をしようと思い、風呂場に行くとこの真夜中に人影がみえる。


凌太「お疲れ様。」


「涼太か!お疲れ。」


今上がったのかタオルで水滴を荒々しく取る、東京の腹方 嘉田苛かたいら げん


腹方は臓方と言う、その土地のリーダーのサポーター役と少し前に世永に教えてもらった。


その腹方の眩は、13歳という若さでこの慰撫団では働いている。

大一さんの肉親であり、華宮家の分家だから臓方もしくは腹方の地位に就きやすい話は聞いたけれどこんな若い時からよく分からない妖怪をよく受け入れたなと思う。


眩「また浴びるだけか?」


凌太「今日は浸かる。」


眩「しっかり温まれ!人は体が温まらないとうまく動けないからな。」


そう言って、眩はタオルと浴衣を洗濯かごに入れ、全裸のまま脱衣所を出て行く。


少しするといつものように眩と世永が言い合いしている声が聞こえてくる。


俺はそれを無視して風呂に浸かり、はじめての戦いに向けて気を集中させるため瞑想をした。

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