2話目『12人の選択』
――TAG GAME START。
その文字が、12人全員のスマホに表示された。
誰も動かなかった。
いや。
動けなかった。
目の前で起きていることが、あまりにも現実離れしていたからだ。
「……なあ」
最初に口を開いたのは、俺のすぐ隣にいた少年だった。
「これ……ドッキリとかじゃないよな?」
「だったら、どれだけ金かかってんだよ」
別の少年が答える。
確かに。
街全体が突然、別の場所に変わるなんてありえない。
空は黒く染まり、建物の壁には見たことのない文字が浮かんでいる。
そして俺たちは――
この街に閉じ込められている。
「とにかく、落ち着こう」
一人の少女が言った。
「私たちは12人。全員同じゲームに参加させられてる」
彼女は周囲を見回す。
「だったら、まずは情報を共有するべき」
「賛成」
すぐに別の人物が答えた。
12人。
俺たちは、円になるように集まった。
名前。
年齢。
自分がゲームに巻き込まれるまで何をしていたか。
しかし。
全員が同じことを言った。
「気づいたら、街にいた」
「俺も」
「私も」
「同じだ」
誰一人として、ここへ来た方法を覚えていない。
その時。
スマホが一斉に震えた。
――ピコン。
全員の画面に、同じ文字が表示される。
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【INITIAL ABILITY】
【初期能力を選択してください】
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「能力……?」
画面には四つの選択肢があった。
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【TELEPORT】
《空間転移》
【CHRONO STOP】
《時間停止》
【STEALTH】
《存在隠蔽》
【UNKNOWN】
《情報未定義》
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「なんだよ、これ……」
一人が呟いた。
「ゲームって……本当にゲームなのか?」
誰も答えない。
俺は画面を見つめた。
TELEPORT。
CHRONO STOP。
STEALTH。
どれも普通じゃない。
でも。
俺が気になったのは、最後の一つだった。
【UNKNOWN】
情報未定義。
それだけ。
「誰か、UNKNOWNを選ぶやついる?」
俺が聞くと。
誰も答えなかった。
当然だ。
何が起きるか分からない能力なんて、怖すぎる。
「じゃあ、俺はTELEPORTにする」
最初に一人が選択した。
画面が白く光る。
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【ABILITY ACCEPTED】
【TELEPORT】
【空間転移能力を付与】
【使用可能回数:3】
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「……3回?」
「回数制限があるのか」
別の人物が画面を見る。
すると、その人物も能力を選択した。
次々と。
12人が、それぞれの能力を選んでいく。
そして。
俺の番が来た。
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【ABILITY SELECT】
【TELEPORT】
【CHRONO STOP】
【STEALTH】
【UNKNOWN】
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俺は迷った。
TELEPORTなら逃げられる。
CHRONO STOPなら、危険な状況を回避できる。
STEALTHなら、敵から身を隠せる。
でも。
UNKNOWNだけは違う。
何も分からない。
能力の効果も。
使用条件も。
代償も。
全てが不明。
だからこそ。
俺は指を伸ばした。
「……これにする」
UNKNOWN。
画面をタップする。
――ピッ。
一瞬、世界が止まった。
音が消えた。
風も止まった。
12人全員が、まるで時間を失ったように静止している。
俺だけが動いていた。
「……え?」
そして。
俺のスマホに、一つの文字が浮かび上がる。
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【ABILITY ACCEPTED】
【UNKNOWN】
【警告】
【この能力は、ゲームの進行に伴い変化します】
【能力の正体を知ることは推奨されません】
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「……なんだよ、それ」
直後。
世界が動き出した。
「おい!」
誰かの声が響いた。
俺はスマホを見た。
そこには新しい表示があった。
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【CODE 01】
《零番目の記憶》
――ZERO MEMORIA――
【GAME AREA 01に存在する最初の記録を発見せよ】
【注意】
【この記録を発見した者は】
【TAG GAMEの真実に接近します】
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「……零番目の記憶?」
誰かが読み上げる。
「最初の記録ってこと?」
「違う」
俺は画面を見ながら答えた。
「最初じゃない」
「……え?」
「零番目だ」
その言葉に、全員が黙った。
0番目。
普通なら存在しない。
1番目より前。
ゲームが始まるより前。
つまり。
このゲームには――
俺たちが知らない何かがある。
その時。
街のどこかから。
低い音が響いた。
ゴォォォォン……。
遠くの建物。
その壁に、一つの文字が浮かび上がった。
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【TRACE START】
【記録地点を表示します】
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街の地図が、スマホに表示される。
赤い点が一つ。
そこには、見覚えのある場所が表示されていた。
「……学校?」
誰かが呟いた。
俺たちが通っていた学校。
今は誰もいないはずの場所。
しかし。
地図の上には、もう一つの表示があった。
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【WARNING】
【記録地点に接近するプレイヤーを確認】
【PLAYER以外の存在を検出】
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「……誰かいるのか?」
12人の間に緊張が走る。
その瞬間。
俺のスマホだけが、別の表示を出した。
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【UNKNOWN ABILITY】
【第一段階を解放します】
【条件】
【《零番目の記憶》に触れろ】
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「……何だよ、これ」
俺が顔を上げた。
その瞬間。
学校の屋上に。
白い仮面が現れた。
TAKER。
あの存在が。
俺たちを見下ろしている。
そして。
12人全員のスマホに、同じ文字が表示された。
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【CODE 01】
【探索を開始します】
【ただし――】
【記録地点には、あなたたち以外の】
【もう一人のプレイヤーが存在します】
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12人。
それなのに。
もう一人。
「……どういうことだよ」
誰かが呟いた。
俺は、学校の屋上を見上げた。
白い仮面。
その隣に。
もう一つ。
人影が立っていた。
その人物は。
俺たちと同じ――
TAG GAMEのプレイヤー画面を持っていた。
そして。
その人物のスマホに表示されている番号は。
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【PLAYER 00】
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俺たちはまだ知らなかった。
このゲームに参加しているのは。
12人ではない。
最初から。
13人だった。




