最悪こそ最高の好機
「……アルキタス」
数瞬後、アーベルは仲間のひとりに目をやる。
「おまえならこの状況にどう対処する」
「後方の連中では敵は倒せぬ。結局俺たちが動かなければならないのなら食料がなくなる前に後退すべき。食うものがなくなってからでは遅いからな」
「なるほど。タウルスは」
「俺も兄貴と同じ意見だ。百体以上の敵。しかも、ネクロドラコやマネフィスクスもいるのだ。余力があるうちに下がるしかあるまい」
「フランシーヌはどうだ?」
「残念だけど、アホ兄弟と同じ意見ね」
「つまり、後退か」
そう呟いたアーベルはクロエも見やる。
「どう思う?」
「私が思うに……」
「経験豊富な方々が同じ意見ということはそれが正しいということになります。そして、それは敵も同じ」
「ということは、それを逆に利用することができるのではないでしょうか?と言っても、どうすればいいのかまでは私にはわかりませんが」
実を言えば、アーベルは驚いていた。
とりあえず問うたクロエからその言葉が来たことに。
そして、それこそがアーベルが持っていた正解だった。
まあ、それを考えるのが俺の仕事なのだが。
心の中でそう呟いたアーベルはクロエの言葉に小さく頷く。
「そのとおり。この状況では誰もが後退せざるを得ないと思うし、現実問題として後退するしかない。だが、そのまま下がってはここまで来た努力がすべて無駄になる。そこでこの後退を利用して魔物どもを罠にかける」
「どのような?」
「やり方は大きく分けてふたつ」
「後退と見せかけて俺たちの背後を襲おうとしたものたちを叩く」
「もうひとつは、後退していないと見せかけて中間地点に居座る魔物たちを一気に叩く」
「だが、今回はこのふたつを組み合わせるという三番目にやり方をおこなおうと思う」
「というと?」
「ありがたいことに魔物たちは学習能力がある。それを利用する」
そして、それから二日後。
その策が始まる。




