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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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魔法の武具

二日後。

五人組となったアーベルの新しいパーティ「プロトポロース」が第二洞窟コラシ攻略を開始する。


表面上の目標は他のチームと同様、洞窟内の魔物殲滅。

だが、その裏にある真の目標はこの最深部にあると思われる魔物の国パラデイソスへ入口の発見と突破。

もちろんその過程で多くの魔物を倒し、最終的には扉の守護者で洞窟の主でもある魔物に対峙することになる。


「さて、これから洞窟探索を開始するわけなのだが、実際のところ、俺たち三人はそれほど奥に進んでいたわけでなく、まして小さな洞窟にはほとんど入っていない」


「となれば……」


そう言って、この洞窟に一番詳しそうな人物を見やる。


「どの程度まで入った?」


むろん、その相手はこれから洞窟に入り剣を振るう者とは思えぬ妖艶な姿をした女性だった。

その女性であるフランシーヌは、防具と呼べるようなものは一切身に纏っておらず、相手に見せつけるように、自慢のフォルムを過度に強調し、さらに太腿も晒す別の商売にこそふさわしいような、青と白を基調とした宝石のように光り輝くドレス風の服に身を包んでいた。


そして、アーベルがその言葉とともに視線を動かしたとき、彼女はその見た目には全く相応しくない唯一の品を翳し、恍惚の表情を浮かべていた。


芸術品と言われても納得しそうな氷でつくられたような細身の剣。


鞘だけではなく剣身にも不必要なくらいの装飾が施されているその剣であるが、本来の使い方においても最高級であることは、彼女が持参したのはこの剣のみであることからも明らか。

むろん、その剣こそ、多くの冒険者の命を奪ってきたもの。


アーベルは小さく息を吐くと、前言を取り消すように、問いの言葉をもう一度口にする。


「俺の大剣、その渾身の一撃を受けても折れるどころか、罅も入らぬその剣はいったい何でできているのだ?」


さすがに剣の話となれば、アルキタスもタウルスもその話に加わるように、フランシーヌが見せびらかす剣を興味深そうに眺める。


「本当にこんな細い剣で大剣とやりあったのか?」

「信じられないが本当だ」

「興味あるな。俺自身で確かめたいので一度手合わせしたいものだな」

「いいけど、死ぬわよ。あなた」


そう言って割り込むように話に入ってきたタウルスを黙らせると、フランシーヌはアーベルも見やる。


「言っておくけど、この剣の本当に力はただ硬いだけではないわよ」

「ほう……」


アーベルは知っている。

彼女に殺されたと思われる何人かは相応の剣技の持ち主だったことを。


アーベルはそのうちのふたりの死体を見た。


焼死体。

ただし、斬られた跡もある。

そして、その焼け方はその斬られた部分が一番ひどく、見た目だけで表現すれば、火剣で斬られたと表現できるものだった。


もちろん火剣などというものは存在しない。


だが、彼女の父親が魔術師協会の会長であることを考えれば、ある可能性とともにその現実味が飛躍的に上昇する。


魔法を込められた水晶製の剣。


酒場で活躍する吟遊詩人の話には魔法剣は何度も登場するものの、実在した記録はないため、単なる妄想の産物だと思っていたのだが、こうなってくると十分にあり得るな。


魔術師としての適正はなく、その代わりに剣技が突出していた娘。

その娘に与えるため、上級魔術師である彼女の父が自らの最高位の魔法を付与した魔法水晶。

そこから生み出された剣となれば、この氷でできたような外見も理解できる。


そして、そうなれば、剣だけではなく、纏っているものも同じ手法でつくられた可能性がある。

動きやすくなるために甲冑は身に着けないと彼女は主張していたが、そういうことであれば、重い甲冑など不要になる。


それこそ俺が求めていたものではないか。


アーベルは心の中で呟く。


「実際の戦闘でそれを見せてもらうこと楽しみにしている」


ちなみに、フランシーヌの妹であるクロエの服は漆黒に統一され、真っ赤な裏地を持つローブの袖には銀色に輝く糸で見慣れない文字が縫い込まれている。

狭い洞窟には不向きなため、今回はかぶっていないが、ここに大きなツバ広帽子が正式な姿となる。


ついでにいえば、クロエは姉と同じ銀髪。

茶色は染めたもので、銀髪こそ彼女本来の髪の色となる。


黒のローブの着用は魔術師協会に所属している魔術師のみに許されたもので、それを纏うことが禁止事項となっている非会員の魔術師と区別する根拠となる。

フランシーヌによれば、素人にはどれも同じ黒いローブに見えるものの、実は能力によって分類される魔術師の階級によって素材やデザインが微妙に違い、クロエが纏うローブは十段階の階級の上から三番目とのこと。

むろん、この年齢では異例の高さということになる。


アーベルがクロエと初めて会ったとき、彼女を駆け出し冒険者だと勘違いしたのは、ローブを着用していなかったため。

ただし、この時、クロエはまだ魔術師協会で修業中、すなわち生徒という身分であったため、ローブは支給されていなかったのであるが。

さらに言えば、クロエ本人には知らされていなかったものの、それは洞窟探索をおこなうための慣熟授業の一環であったのが、そのような場に予想外の魔物が現れるなど教師たちにとって想定外の出来事だった。

とはいえ、万が一、あの場にアーベルが現れず、クロエが死亡するようなことになれば、洞窟探索を指示した教師だけではなく、その上司も父親の逆鱗に触れ、下手をすれば物理的に首を飛んだ可能性があったといえるだろう。


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