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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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新しき名前とチームの目標

そして、本格的な洞窟探索が始まる前日の夜。

五人は「ピクロセニア」で打ち合わせをおこなう。

いくつかのことを決めるために。


そして、そのひとつ。

それは……。


「チーム名の変更?」

「ああ」


フランシーヌが驚くように問うた言葉にアーベルは短く答えた。


「『負け犬』というチーム名は俺やアルキタスたちにとっては意味のあるものだった。だが、これからはクロエとフランシーヌが加わって活動していくのだ。それにふさわしいものにすべきだろう」


「そもそも、アルキタスとタウルスはこの『負け犬』というチーム名を気に入っていなかった。本格的な探索が始まる前に改名することになっていたのだ」


「そうだったよな」

「そのとおり」

「そうそう」


「それで、決まったのか?その名前は」

「ああ」


「と言っても、生意気にもタウルスが主張を曲げていないので、ひとつにならず、そこで一本化は頓挫しているのだが」

「そうか」


「では、まず聞かせてもらおうか?ふたりの考えた名前を」

「おう」


「では、まず俺から」


そう言ってアルキタスはわざとらしく咳払いで仕切り直しをする。


「頂点に立つ者たち」


「それがおまえの案なのか?アルキタス」

「ああ」


「わかった。では、タウルス。おまえが考えた名前を」

「ああ」


「最高の中の最高。これが俺の考えた新しいチーム名だ」

「なるほど」


アーベルはそう言ってから視線を動かした先にいたのはふたりの女性だった。


「どう思う?」

「全然ダメ」


瞬殺である。

当然、提案者からは即座に声が上がる。


「何が全然ダメなのだ?」

「そうだ。そういうのならおまえも何か示してみろ」

「その勝負受けましょう」


なぜか勝負になってしまったチーム名。

そして、数百瞬後。


自称十九歳だが、見た目、そして、おそらく実年齢も最年長者である女性が口を開く。


「発表します」


「ふたりの美少女と三人の汚い下僕」


「ちょっと待て。下僕とはなんだ」

「しかも、汚いとは。何たる侮辱。納得いかん」

「だって、本当のことじゃないの。特に汚物兄弟は」

「ふ、ふざけるな。おい、アーベル。これは絶対に却下だ。そうでなければ俺たちふたりはチームを抜ける」


「それは困るな。ということで、却下」


「わかった。じゃあ、もうひとつ」


「かわいいふたりの乙女と彼女たちに同行するには全く不似合いなバカで不細工な男たち」

「何が乙女だ。ババアの分際で……」

「あんたたち。死にたいの?汚物兄弟」

「それはこっちのセリフだ。自称十九歳」


結局、まとまらず。


「もういい。アーベル。おまえも何か出せ。そして、それに決める」

「俺も兄貴賛成だ」

「仕方がないわね。私もそれでいいわよ」


そう言って、三人はアーベルに大役を丸投げする。


「アーベルも何か考えていたのだろう?」

「まあな」


タウルスからの言葉にアーベルはそう応じる。


「……次の扉を開く者。または開拓者。そうでなければ、進歩」


そう言ってアーベルは大きく息を吐きだす。


頃合いだな。

すべてでないにしろ、秘密の一部を開陳すべき。


そう心の中で呟くと、さらに言葉を続ける。


「そして、チーム名を決めるにあたり、今後の目標も示しておこう」


「アルキタス。そして、タウルス。おまえたちは洞窟に入って何をする?」

「もちろん中にいる魔物を全部狩る。そして、戦いを終わらせる」

「なるほど。フランシーヌは?」

「不本意だけどバカ兄弟とほぼ同じね」

「まあ、そうだろうな。そして、多くの冒険者も同様のことを考えているだろう。だが……」


「それでは足りない」

「足りない?」

「ああ」


「俺は、『黄金の盾』のメンバーとして第一洞窟スコディーの最深部まで行った」


「そこにはその場を守護する魔物がいた」


「いや。最深部にはどこかに繋がる扉があり、その魔物はその扉を守護していた。そして、俺たちはその魔物を倒したのだが、絶命寸前、その魔物は扉を破壊し、さらに一帯の天井を崩した。それから先には進ませないように」


「俺たちはそれを見て察した。あの扉の先に魔物たちの本拠地があるのだと」


「そこから推測した。おそらく第二、第三洞窟も同様に最深部に扉がある。『黄金の盾』は第三洞窟の扉を抜くつもりで探索を続けているのは間違いない」


「そこで俺たちはできるだけ早く第二洞窟最深部に到達し、番兵を倒し、扉を突破し、さらに先に進む。むろん、『黄金の盾』よりも早く。そして、魔物どもの本拠地。そこに誰よりも先に到着する名誉を得る」


「これが目標であり、チーム名もその偉業にふさわしいものにしなければならない」


「そこから考えて……」


「開拓者こそふさわしいと思う」

「悪くない」

「俺も賛成」

「だけど、捻りが足りないわね」

「そんなものいるのか?」

「だから、あなたたちはボンクラなのよ。汚物兄弟」


そう言ってフランシーヌがふたりを黙らせたところで、アーベルを見やる。


「開拓者にしたい理由はわかった。でも、それは直接的過ぎる。ということで、『新たな道を切り開く者』、または『闇夜を照らし道しるべとなる者』というのはどうかしら?」


「いいだろう。だが、名前が少々長い。特に後者は。そうなると……先鋒。または先駆け」

「新しき道を切り開く者……先駆けか。俺は賛成」

「俺もいい」


「では、今後俺たちは『チーム・先駆け』と名乗ることに……」


決定しかけたところで、アーベルはクロエが全く話に加わっていないことに気づく。

今までなら気にもならないことであったのだが、相手が年少の少女ということであれば、多少なりとも配慮は必要であろう。


面倒なことだ。


誰にも聞こえないようにそう呟くと、精一杯の笑みをつくり、クロエに視線を向ける。


「クロエ。そうしたいのだが構わないか?もし、違う案があれば……」


だが、それは要らぬ配慮だったようで、クロエはすぐさまこう答える。


「『先駆け』。非常にいい名前だと思います」


「よかった。では、決定だ。明日。組合に登録してくる」


こうして、アーベルたちの新しいチーム名は「チーム・先駆け」と決まった。




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