アーベルの真の武器
「ところで、フランシーヌ」
「前衛となるふたりの実力をどう見た?」
アーベルからの問いにフランシーヌは少しだけ目を動かし、それから口を開く。
「意外にやるわね」
「意外にだと」
「では、結構やると訂正しておきましょう」
「そのうえであなたたちに尋ねます」
「あなたたちふたりはそれだけの実力がありながら、ろくに剣も振るえないアーベルの下にいるのはなぜですか?」
そう。
実を言えば、その言葉に反し、フランシーヌはふたりの実力に驚いていた。
ふたり同時にどころか、一対一でやっても確実に勝てる相手ではない。
それどころか、少しでも油断をしたら負ける。
それがフランシーヌの彼らに対する正しい評価となる。
これだけの実力があれば、ふたりが中心になってチームをつくって活動することだって可能。
それなのに、なぜわざわざアーベルの下にいるのか?
フランシーヌの問いはそうおかしいものではないといえるだろう。
その問いにアルキタスが自嘲気味の笑みとともにこう答える。
「たしかにクヌピやマイムー程度の相手にするだけなら俺たちふたりだけで十分だ。だが……」
「俺たちはもっと強い敵と戦いたい。だが、そのような敵は一対一で戦えるわけでも、剣士だけで構成されているわけでもない」
「実際、ただ目の前の敵を倒せばいいと思っていた時もあったのだが、そのような戦い方をしていては待っているのは死だけだと悟った。幸運にも死なずにその教訓を得た俺たちは自分たちに不足しているものを持っている奴を探した」
「その辿り着いた先がアーベルだったと?」
「そうだ」
「あんたは知らないかもしれないがアーベルは悪党だ。それもただの悪党ではない。最上級の悪党だ。それは洞窟の中で魔物たちと戦うために絶対に必要なもの。そして、実際にアーベルの下で戦って思った。俺たちの選択は間違っていなかったと」
「なるほど」
「ただの筋肉バカだと思っていましたが、少しは頭も使えるのですね」
「ですが、あなたたちの選択は間違っていない。それは私も十分に知っている。もう少しで死ぬくらいの経験によって」
アルキタスの述懐にそう応じたフランシーヌの口から漏れ出したのは、三度にわたるアーベル襲撃の失敗の経緯だった。
「……やってくださいと言わんばかりの隙だらけ。そして、どれだけ周囲を見ても罠などなかった。それにもかかわらず……」
「狩る側だったはずの私がいつの間にか狩られる側になっていた。必死になって逃げなければならなかった。いや。こっちは必至でも追ってくる側はお遊び程度。この屈辱を胸に再戦を挑んだ。だけど、結果は同じ。前回よりも大きな嘲笑を聞きながら逃げた。そして、三度目。再び逃げながら私は悟った。この男には勝てない。いや。この男に手を出してはいけないと」
「だが、今のアーベルは魔法が使えず、剣も腕だって昔とは比べようがないだろう。なぜ狙わない?」
「それは、さっきあんたが言ったことと同じ」
「この男の真の恐ろしさは剣でも魔法でもない。その悪辣な謀略」
「それを知っているからよ」




