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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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冒険者狩り

翌日、五人組となったアーベルたちは洞窟へ潜る。

むろん、新しく加わったふたりの実力を再度確かめることと、チームとしての慣熟訓練が目的だ。


狩場。

ここに来るまでの過程でアーベルは気づいた。

フランシーヌの驚くべき実力を。

そして、彼女の父でもある魔術師協会会長アナクシマンダーが口にした「剣の強さを持ち、洞窟内の探索に絶対に必要なマッピング能力を持つ者というそちらの望みを完全に満足させる人物」という言葉が正しかったことを。


だが、それはある意味当然と言えば当然であろう。

フランシーヌは元々冒険者狩りをおこなっていた者。

つまり、暗殺ポイントの選定から、暗殺、それから逃走ルートの確保。

そのすべてをひとりで立案、実行していたのだ。

松明さえ使えない暗闇の洞窟で。

その核になる剣技とマッピング能力がなければとっくにお縄になっているのだから。


ちなみに、冒険者狩りとは、指定された冒険者を暗殺するもので、無差別に殺すものではない。

そして、その顧客は、その多くが外界と呼ばれる洞窟の外でのトラブルによってから冒険者の行為により利益を失った、または不利益を被ったいわゆるステークホルダー。

だが、顧客の何割かは競争相手の始末するよう依頼した同業者と言われている。

もちろんすべてが闇の中で実際にそれが正しいのかはわからない。


そして、数段階の仲介によって構成された裏仕事専門の斡旋業者からの指示されたターゲットを実際に洞窟内で抹殺するのがスコタディーと呼ばれる冒険者狩りの実行者となる。


当然ながら、冒険者狩りは重罪であり、捕らえられたスコタディーは減刑なしの即刻公開処刑となるのだが、実際にそれがおこなわれた例はほんのわずかである。

それだけの手練れを生きたまま捕えることは不可能。

多くの場合、死体が引き渡されるからだ。

むろん、捕らえられる直前に自刃する者もそこに含まれる。


そして、処刑されるよりも珍しい例、というより唯一の例が、その人物を特定されていながら、その後も堂々と洞窟の内外で活動をしている最高の賞金首である女殺し屋グレイシー、つまりフランシーヌだ。


三度にわたってアーベルの抹殺に失敗したグレイシーが『暁の乙女』のリーダーであるフランシーヌと同一人物であることをアーベルは知っている。

つまり、アーベルが冒険者組合にその事実を知らせるだけで、グレイシーは終わる。

だが、フランシーヌは生きている。

つまり、アーベルも、カッシーニたち「黄金の盾」のメンバーもそれを伝えていないのだ。


「そんな奴に構ってはいられない。そもそも殺される奴が悪いのだ」


アーベルは彼女を放置している理由をそう言った。

だが、実際は違う。

彼女を泳がせ、その組織そのものを潰し、さらに依頼主を消す。


彼女を断頭台に送ってもただそれだけ。

次の実行者が送り込まれるだけ。

元を断たなければ意味がないのだ。


それが「黄金の盾」全員の決定だった。


そう。

彼女をチームに入れた理由のひとつは、暗殺依頼を出した者の探索。


もちろん彼女と依頼者の間には仲介者が山ほど入る。

簡単には辿り着かないのだが、入口を見つければ逆進は可能。

だが……。


「私は父親から仕事を受けていた。もっとも、父親も封がされた手紙を渡すだけだったのでそれ以上はわからないようだったが」

「つまり、フランシーヌも調べたのか?依頼者を」

「というより、元受けを。そして、そいつと交渉し報酬を増やそうとしたのだが、わからなかった」

「報酬はどうやって届く?」

「魔術師協会に届けられていたようだ」


「私としても元受けは知りたいな。仕事を失敗したうえ、その相手のチームに加わったのだ。報復されてもおかしくないから」

「たしかに」


「だが、それはなるべく気づかれぬようにやるべきだろうな。警戒される」

「そうですね。それに、それはあくまでついで。本業の妨げになってはいけない」

「そういうこと」


「ただし、今の状態の方がフランシーヌは安全だと言える。少なくても依頼者からの報復はない」

「なぜ?」

「いつでも殺すことができる場所を確保した。あとはそのタイミングだけ。相手にはそう見えるから」


「誰にも言っていないのだろう。俺に面が割れていることは」

「もちろん」

「では、大丈夫だ」


フランシーヌには言わなかったが……。


フランシーヌとクロエの父親である魔術師協会アナクシマンダー。

むろん依頼人ではないだろう。

だが、あの胡散臭い男なら、冒険者狩りの元締めをやっていてもおかしくない。

そして、その娘ふたりを俺のもとに送り込んだ。

これが仕事完遂の準備と見えなくもない。

十分に注意すべきだ。


アーベルが心の中で呟きながら、酒を飲んだ。


これだけ近くにいれば、この酒にだって毒を仕込むことはできる。

そのために最高級の解毒剤は絶対に手放せない。


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