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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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アーベルの呟き

第二洞窟コラシ攻略の拠点となる町コルディリネ。

その最大の酒場「ピクロセニア」に五人に増えたチーム「負け犬」のメンバーがいた。


その中心は、最後に、そして、半強制的に加わったどう見てもそのグループの最年長者となる二十代半ばの女性。

といっても、自身の言葉によればアーベルと同じ十九歳。

本人がそう言っている以上、それを信じるしかないのだが、「間違いなく五歳は誤魔化しているだろう。ババァの分際で十九歳とは身の程を知れ」というのが彼女の言葉を全く信用していないアルキタスとタウルスの意見である。

当然彼女に対して警戒心丸出しのふたりは近寄らない。

そして、その最年長者は自身の両隣に指名したのは、クロエとアーベル。

もちろん、妹の護衛という名目がチームに加わったのだから、前者は理解できる。


だが、アーベルが左隣に置くというのはやや理解できないことである。

だが……。


「理由?簡単なこと。一番危ないあなたが可愛い妹に手を出さないように私が間に入る」


そう言ってクロエの顔を真っ赤にさせる。


「それは結構だが、おまえが私を殺そうとしていた事実もある。信用できない奴の要求を受けるはずがないだろう」

「そういうことは座る前に言いなさい。私がその気だったらあなたはすでに三回は死んでいる」


自身の言葉にそう反論されるとその言葉を鼻で笑うアーベルは何事もなかったように酒を飲む。

女性は気分を害したように顔を顰め言葉を続ける。


「つまり、私を心底信じている。そう思っていいのかしら?」

「全くないな。それは」

「では……」

「だが、心の底からどう思っているかはともかく、チームに加えた以上、表面上は信じる。そういうことだ」


自分の問いの言葉を遮ってそう言い切ったアーベルをもう一度眺め、それから、女は鼻で笑う。


「もしかしてそうなっても切り抜けられる自信があるということ?」

「さあな。だいたい俺が自分の手の内を殺そうとしている相手に教えるはずがないだろう」


そう言って相手を鼻白ませたアーベルは相手を見返す。


「それよりも、おまえをなんと呼べばいいか決めておこうか。冒険者殺しとして名が知れ渡っているグレイシーではさすがにこちらにも悪影響が及ぶからな」


「一応普通の冒険者としてはフランシーヌということになっているのだから、ここでもそれでいきたいと思うのだが、おまえはそれでいいか?それとも別の名を用意するか?」


「フランシーヌでいいわよ」

「わかった。クロエも、間違ってもグレイシーという名は使わぬように。そして、アルキタスとタウルス。おまえたちふたりも忘れるなよ。彼女はフランシーヌだ」

「わかった」


「名前が決まったところで私からもひとつ」


たった今、フランシーヌと名乗ることが決まったその女性がアーベルを見やる。


「噂によると、あなたは魔物に剣を振るう力と魔力を奪われ、その直後、仲間に捨てられた。これは本当のことなのかしら?」

「ああ」

「それなのに……」


そう言ったフランシーヌの目はあきらかに疑念の色に染められていた。


「つい最近一緒に仕事をして大金を稼いだそうね」

「それも本当だ」

「おかしくない?自分たちが不要だと捨てた仲間と組んで仕事をする方もだけど、自分を捨てた仲間と再び仕事をするなどあり得ないでしょう」


「実は、俺もそう思っていた」

「俺も」


兄弟剣士がフランシーヌの言葉に続く。


「命じればアーベルの代わりにあの男を斬ってやったぞ」

「そのとおり」

「それは頼もしい」


アーベルはそう言ってニヤリと笑う。


「たしかに普通ならあり得ない。力を失った俺を洞窟の中に放り出した奴らと組むなど。そして、おまえたちなら見つけた瞬間斬りかかるだろう。もちろん、俺も奴らに対して含むところはある。だが……」


「それは奴らにとっては引け目を感じる要素。それを利用しない手はない。つまり、一点貸しというわけだ。しかも、奴らは強い。そのような奴らを見えない鎖で縛り駒として使えるのならそちらの方が殺してしまうより百倍いい。そういうことだ」


「ただし、一度裏切った奴は何度でも裏切るというのは古今東西どの世界においても通用する格言でもある。十分に注意はするが」

「でも、実際に生かす価値があるだけ強いの?あなたを捨てた仲間は?」


「私が知っているかぎり、とてもそうは思えないのだけど」


そう。

フランシーヌは、殺し屋としてアーベルを狙った時、残るメンバーとも対峙している。

当然その力量は凡そ把握している。


そして、その感想は……。

中の上。


つまり、剣士の最上位にあるフランシーヌにとってそれほど苦になる相手ではない。

その程度の者もそこまで言うのは、過大評価そのもの。


それがフランシーヌの意見となる。


むろんそれは正しい評価。

ただしそれは、以前の彼らのという条件が付く。

そして、今の彼らの力は以前の自分と同等。

つまり、ふたりでひとりということになるものの、彼女と同等。十分に強いと言える。


アーベルは視線を動かす。


「アルキタスとタウルス。おまえたちは最近のカッシーニたちの戦いぶりを見ているわけなのだが、どうだった?奴らは」

「強い」

「ああ。かなり強い。以前見た時とは比べものにならないくらいに」


その言葉に頷いたアーベルは再び視線を自称十九歳の女性へ向ける。


「そういうことだ」


「俺がいなくなったことで力が解放されたようだな。昔の俺と同等くらいにはなっている。それが俺の評価だ」


まあ、それこそ本来の俺の力なのだが。


アーベルは心の中でそう呟いた。


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