冒険者にとって必要なもの
アーベルとアナクシマンダーとのやりとり。
それを間近で見ていた、いや、聞いていたアルキタスとタウルスは思う。
アーベルの勝ち。
だが、相手はそう考えていなかった。
「勇者アーベルの言葉は理解した。たしかに訓練不足の者が前線に出向いても足手まといになるだけだ。だが、問題ない」
「我が娘クロエは前線で魔物どもを圧倒するだけの魔法を使いこなせる。後は、目の前の敵にはどの魔法が有効なのか。そして、どのタイミングでどの魔法を使うかを覚えることだけ。つまり、その指示を出せる者がいればクロエの力は完璧に発揮させる」
「まあ、そちらのチームにその指示を出せる者がいなければ勇者アーベルの言葉は正しいということになるのだが」
「いかがかな?勇者アーベル」
形勢逆転と言ったところだろうか。
だが、アーベルにとってこの敗戦は全く問題ない。
いや。
それどころか、素晴らしい勝利ということになる。
数瞬後、アーベルが口を開く。
「いいだろう。ただし……」
「俺は自分の目で確かめず、見ず知らずの者の言葉を信じるほどお人好しではない」
「その実力を確かめさせてもらう」
そう。
アーベルはクロエの実力を全く知らなかった。
たとえば、あの時、クロエが消えかかった松明の火を魔法で復活でもさせていれば、父親の言葉もそれなりに信用できる。
だが、実際は最低位の魔法さえ使うことなく、力業で火起こしをする俺を見ているだけだった。
あり得ないだろう。
心の中でそう呟きながら、アーベルは疑わしそうに父娘を眺める。
だが、父親の言葉が本当なら……。
「もし、会長の言葉が正しければ、娘さんを俺のチームに加える」
「よし。最も重要な部分で合意したわけだ」
「ところで、勇者アーベル」
「君が元いたチーム『黄金の盾』にはどの程度の魔術師がいたのかね」
「それは……」
これはなかなか難しい問いであった。
魔術師を、というより、剣士を含めて、その力を数値化する手立ては存在しない。
もちろん上中下と判別することは簡単ではあるのだが、それは評価する者の主観が多分に影響するもので、絶対的なものではない。
さらに、その必要性によってもその評価は変わる。
「あのチームには専属の魔術師がひとり所属していた。と言っても、魔術師協会に登録はしていない。自称魔術師ではあるのだが。彼のレベルは中の下。または下の上といったところであろう」
「それから、もうひとり。そいつは剣士兼任であったが、そちらは中の上。こちらも魔術師協会には登録していなかった」
「なるほど」
「まあ、冒険者たちに所属する魔術師の半数以上は面倒な制約を嫌い登録などしない。もちろんそれでも活動できるわけなのだが、このような場合に困るな」
「その点、協会所属の魔術師であれば、技量検査というものがあり、その評価は絶対的なものになるのだが」




