新しい仲間
翌日。
相手の指定場所であるゴクレニウスの西に広がる魔術師協会が所有し魔術師たちが訓練に使用する草原で通称魔術師の丘。
そこでアーベルたちは目にする。
それまで見たことがないとてつもなく巨大な火球を。
「噂によると、勇者アーベルは魔法も使用できる非常に稀な魔法剣士だったと聞く。その魔法剣士はこれくらいの火球を作り出せたか」
まさに「唖然」という言葉がふさわしいアーベルたちを眺めながらアナクシマンダーをそう言う。
「むろんそんなことはあるまい。これくらいの火球を作り出せるのはそうはいない。宮廷魔術師だってこれほどの大きさの火球をつくりだすことはできない。魔法剣士。響きは良いが、自身の能力を半分に割った中途半端な者であるとも言える。もちろん、その才能が大きければ大多数の魔術師より上に立つことはできるだろう」
「だが、そうであっても剣を極めた者よりは剣で上に行くことはできず、魔法を極めた者の上には行くことはできない」
そのとおり。
アーベルは呟く。
もっとも、今の俺はそのどちらも失っているのだが。
「まあ、そのとおりだ」
「だが、疑問はある」
「これだけの魔法を使えるのにあの時使用しなかった?」
「まだ加減がうまくできないのだ」
アーベルの問いにアナクシマンダーは苦笑いする。
「だから、間違って使ったらとんでもないことになる。だから、あの時は魔法を使うなと言ったのだ」
「もちろんそのような事態にならぬよう護衛を付けたのだが、その結果があれだったというわけだ」
「なるほど」
「たしかにその懸念は理解する。さっきのような大火球をあの狭い洞窟内で作りだしたら魔物どころか味方も全員巻き込むことになるからな」
「だが、そうであれば今だってその魔法は使えないだろう。つまり……」
洞窟内の探索には向いていない。
アーベルがそう言いかけたところで、アナクシマンダーが右手でそれを制す。
「心配するな。相応には使いこなせるようになっている。ただし、自由自在ということではない。だから指示をする者が必要なのだ」
「それと……」
「どうやら、洞窟での恐怖体験がクロエにトラウマを植えつけている。そのため、そのような状況にならぬチームに入れる必要があるのだ」
「それが俺のチームというわけか?」
「そうなる」
「もうひとつ尋ねる」
「そこまでして自分の娘を洞窟に送り込もうとする。あんたの権力と財があれば、あんな危険地帯にいかなくても暮らしていけるだろう」
「しかも、クロエは女。むろん冒険者チーム構成員の二割は女で、その中で魔術師に絞れば八割くらいは女だ。それでも……」
「いや。そこは、だからこそということになる」
「魔術師協会の長は、多くの女性魔術師を死地に送り込みながら、身内は安全な場所に置くのかという批判に応える義務があるのだ。私には」
「もちろん娘が無才であれば、いくらでも言い訳できる。だが、クロエの才はほぼすべての魔術師の上をいく。そのようなことは許されない」
「そういうことだ」
自身の地位を保持するために娘を差し出すのか。
アーベルは出かかった言葉を飲み込む。
なぜなら、それによって最高の魔術師を手に入れることができるのだから。
「すべて承知した。そして……」
「クロエを我がチームに迎え入れる」




