その魔術師は
「始まりの町」ゴクレニウス。
その中心にある豪華な屋敷の前に立ったアーベルはこのような言葉を吐きだしていた。
「会長ともなると随分と役得があるようだな」
むろんそう言うだけの証拠をアーベルは持ち合わせているわけではない。
だが、それと同時にそうでなければ安全な場所にいる者がこれだけの邸宅に住めるはずがないのも事実。
そして、この館の主である魔術師協会会長アナクシマンダーの同類である冒険者組合の幹部たちの豪勢な暮らしから考えれば相応のことをやっているのは間違いないといえるだろう。
そのよく聞こえる独り言に顔を歪めた家人だったが、何も言うことなく、アゾフィー、アーベル、アルキタス、タウルスを招き入れる。
そして、応接間らしき部屋の前にやってきたところで、その男が口を開く。
「この後はアーベル様たち三人だけが入るように主から申しつけられております」
そう言うと、アゾフィーとともに廊下の奥へ消えていく。
「……罠でもあるのではないのか?アーベル」
「俺は協会の会長に恨みを買うようなことはしていない。もしかして、おまえたち、なにかやらかしたのか?」
「やらん」
「俺だって」
「では、問題ないだろう。入ろう」
そう言ってアーベルが扉を開ける。
そして、アーベルを先頭に三人が中に入ると、革張りのソファーで待っていたのは会長のアナクシマンダー。
そして……。
「……まあ、そうだろうな」
隣に座る少女を見たアーベルは小さく呟く。
クロエ。
アーベルが助けた少女だった。




