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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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コインの裏表

人間たちにとっての脅威になっていた転移魔法の攻略法を見つけた。

攻略法と言っても目の前に現れた時の対処法が見つかったというだけではあるのだが、それでも十分な進歩といえるだろう。


「本来は罰金もののおこないだ。アルキタス。タウルス。もちろん結果的には功労者といえるが、本来は罰金ものだ。それに下手をすれば死んでいたぞ」


「今度俺の指示に従わなかった場合は、どれだけ腕があってもクビにする」


アーベルはそう言ってアルキタスとタウルスに釘を刺す。


そして……。


「さて、諸君」


そう言ったアーベルは仲間五人を見渡す。


「俺たちは目の前に転移してきた魔物どもを簡単に仕留める手立てを手に入れたわけなのだが、これを組合に報告すべきかどうか」


「むろん本来は報告すべきものではあるし、それによって組合から情報料が得られるわけなのだが、これを伝えずに我々六人だけの知識とした場合、今後も大きな利が俺たちのもとに入ってくることになる」


「さて、これについての意見を聞こうか?まず、『黄金の盾』の諸君から」

「連絡不要」

「ああ。俺もカッシーニに賛成だ。そもそも小銭が欲しいときならともかく、この場にいる全員、金には困っていない」

「それに、これは冒険者仲間で通常おこなわれていることだ。問題ない」

「なるほど」


アーベルは元の仲間三人の言葉にそう応じ、続いて、現在の仲間であるアルキタスとタウルスを見やる。


「おまえたちはどうだ?」

「知らせるべきだろう」

「それによって助かる者も出るのだ。それこそ俺たちは楽に大金を手に入れるのだ。情報を知らせてもバチは当たるまい」

「なるほど。アルキタスとタウルスの意見も一利ある」


「だが、ここでアルキタスとタウルスの意見に賛成してしまうと、三対三。決着がつかなくなる」


「どうする?」


「まあ、そういう時はコインだな」


カッシーニの提案に、小さく頷いたアーベルは兄弟剣士を見る。


「おまえたちも構わないな」

「ああ」


「では、決めよう」

「若造。先手はおまえたちに譲るので決めろ」

「そうか。では、表」

「では、こちらは裏だ。アーベル。おまえがやれ」


そして……。


「裏。俺たちの勝ち。つまり、これは俺たちだけが知る情報だ。いいな」

「承知した」


「小僧どももいいな」

「小僧ではない。だが、決定には従う。心配するな」


こうして、この戦いで手に入れた情報は六人だけの秘密となる。


だが、これはアルキタスとタウルスが知らない事実がある。


アーベルはコインを使ったイカサマの達人。

コインの表と裏を自由に出すくらい造作もない。

そのアーベルをカッシーニが指名した

実を言えば、アーベルもカッシーニたちと同意見。

だが、多数決で強行すれば、わだかまりで出来、最悪兄弟に裏切られる。

その点、コインで決めた結果となれば、納得はしていなくてもそれに従う。


アーベルとカッシーニの阿吽の呼吸。

そして、勇者という肩書はあるが、アーベルも典型的冒険者。

つまり、悪党ということである。

もっとも、それくらいでなければ、この世界は生きていけないであるし、そういう点で言えば兄弟剣士はまだまだ甘いということになる。


もっとも。アーベルがカッシーニたちの意見に賛成したのは自身の利だけのためだけではない。


これを利用して転移してきた魔物を仕留められるのは中級以上の冒険者チームのみ。

だが、その情報を手に入れれば、駆け出し冒険者たちも我先にと魔物たちに殺到する。

その結果、混乱状態に陥って思ったように魔物を狩ることができなくなる。

そうなれば、目の前に実態化した魔物が現われ、今度は自分たちが狩られる側になり、敗走が始まる。

本来で叩けるはずの冒険者チームもその濁流に飲まれ大損害を被る。


何度か転移での襲撃を見れば、それなりの者なら対処方法に気づく。

それまでは黙っていた方が損害が少ないというわけだ。


「とりあえず、組合に報告したところで今回の共闘は終わりだ。後はどちらが先に魔物の本拠地に辿りつくか競争だ」


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