その者も真の才は
「……なるほど」
「それはなかなか楽しめる状況であるようだな」
カッシーニからその始まりから現在に至るまでの状況を聞いたところ、アーベルは薄い笑みを浮かべる。
「第二洞窟コラシで活動する冒険者たちは、アグリオスとリュコスの名を聞いて参加を見送ったわけだが、現状はさらに悪そうだな」
「しかも、戦力としてアテになるアベルフェルダが負傷して討伐に参加できないのは痛いな」
「俺もそう思う」
「だが、奴の下で戦うということは、どれだか働いても奴に上前をタップリと刎ねられることと同義語。いないのはいないで良いこともある。それで……」
「おまえたちは組合とどんな契約をしているのだ?」
むろん、カッシーニたち三人としては、隠したいのは山々。
だが、相手が手の内を知り尽くすアーベルとなれば、隠しきれるものではない。
そうであれば、最初から開陳した方がいい。
すべてを話す。
「……それで、そっちはどうなのだ?アーベル」
「こっちか……」
ダレストの問いにアーベルは苦笑いする。
「聞きたいか?」
「ああ」
「そうか」
そう言ったアーベルは話に加わるチャンスをうかがっていた新しい仲間を見る。
「アルキタス。カッシーニたちの報酬条件を聞いてどう思った?」
「言っていいのか?」
「ああ」
「少ないと思った」
「タウルスは?」
「俺も命を張ってやるにしては少ないと思った」
「まあ、そういうことだ」
「もしかして、俺が、おまえたちの報酬の一部を寄こせとでも言うと思ったか。カッシーニ。ダレスト。そして、セルシウス」
「俺はそこまで欲は掻かない。自分たちの分は自分たちで交渉した」
「そ、それで、おまえは組合とどのような報酬契約をしたのだ?」
「ひとり当たり、アグリオス三百体分を前払い。そして、後払いで七百体分。合計千体分」
「アグリオス千体分の報酬だと。しかもひとり……」
「むろん、スパティウムの開放に成功したらさらの五百体分のボーナスだ。満足する報酬だ。だから、安心しろ。おまえたちの取り分から分け前を寄こせなどとは言わない。その代わり、おまえたちもそのようなことは言うなよ」
三人はそこでようやく理解した。
ケチな組合が自分たちの要求をあっさりと受け入れた理由を。
アーベルたちと比べて圧倒的な少なさ。
しかも、その中には同行する冒険者たちの分まで含まれているのだ。
安い。
彼らはそう判断したのだ。
だが、契約をしてしまった以上、どうにもならない。
「まあ、慰めにはならないが、おまえたち受け取る報酬もいつもと比べれば少ないとは言えないものだ」
「とりあえず今はスパティウム開放に尽力しようではないか」
「旧友たちよ」
「なにしろ、他のチームは皆オマケのようなもの。結局俺たちだけでケリをつけるつもりでやらなければならないのだから」
敗北感。
できれば、アーベルが手にする報酬を奪いたい。
だが、それもこれもスパティウム開放を成し遂げた後の話だ。
それまでは協力しなければならない。
アーベルの言うとおり、アグリオスやリュコスを相手にできるのはおそらく六人だけなのだから。




