その者の計画は
むろん、長年の仲間が何を考えているのか、アーベルはその表情から察していた。
助け船を出してやるか。
心の中でアーベルは呟く。
「カッシーニ。おまえはスパティウム奪還するためにどのような策を考えているのか聞いておこうか」
「まさか何も考えていないわけではあるまい?」
「当たり前だ」
「安心した。では、聞かせてもらおうか」
そうは言ったものの、アーベルは知っている。
カッシーニが典型的猪武者。
そして、ダレストも魔術師とは思えぬくらいの直情的思考の持ち主。
辛うじてセルシウスが微妙な色付けをすることができるものの、おそらくここではふたりの意見が通る。
しかも、その方法であれば、危険ではあるが、自分たちの手柄になる度合いが高い。
間違いなく、あれだ。
そして、カッシーニが示したのはアーベルが呟いた策。
「……なるほど」
「つまり、手前の入口から力攻めをしてスパティウムに突入し、そのまま敵を押し込み、もうひとつの出入口に追い込むわけだな」
「そうだ」
「だが、それでは獲物の多くを逃がすことになるのではないのか?」
「いいのだ」
「この人数でリュコスの大群、そこにアグリオスが加わる敵とやり合うのだ。すべてを狩るなど無理なのだ。それに……」
「これはおまえがよく使う策の応用だ」
「逃げ場をつくった上で追い込む。そうすれば完全包囲するより楽に敵を崩壊させられる。おまえはよくそう言っていたはずだが」
「そのとおり。物覚えがよくて助かるぞ。カッシーニ」
「だが、それでは逃走した魔物を狩った者たちから後日おまえのもとに請求書が届くことになるぞ。カッシーニ」
「そうならぬよう俺たちが手助けしてやろう」
そう言ってアーベルはウィンクをしてみせる。
それを気持ち悪そうに払い載せたカッシーニはアーベルを見返す。
「どうやって」
「簡単なことだ。俺たちが栓に蓋をする役を請け負ってやる」
「どうだ?そうすればスパティウムの敵を全部狩れる」
「いいのか?」
「ああ」
カッシーニは訝しそうにアーベルを見やる。
当然だ。
アーベルは総崩れとなって敗走する敵の前に立つと言っているのだ。
どれだけ腕に自信があろうが無謀というもの。
むろん、アーベルだってこんな初歩の初歩のことに気づかぬはずがない。
つまり、対策があるということだ。
だが、これが可能なのは、強力な魔法を使える魔術師がいる場合のみなのだが、アーベルはもちろんふたりの剣士もその素養はなさそう。
つまり、剣でそれをおこなうということ。
さすがにそれは無謀だ。
「アーベル。新しい仲間は魔法を使えるのか?」
「いや」
「魔法水晶を大量に持ち込むということか?」
「まあ、相応の数は持っているが、そんなものに頼る気はない」
「魔法には頼らない?」
「当然だ」
相変わらず何を考えているのかわからないが、本人たちがそれでいいと言っているのなら、それでいい。
そこでアーベルが死ぬのなら例の件は闇の中。
これ幸い。
「いいだろう」
「では、決まりだ」
「そうだ。せっかくの機会だ。おまえたちも三人だけで戦え。同行する仲間はすべて断って。つまり、俺たち六人でカタをつける」
たしかに同行するのは弱小パーティばかり。
戦力にはならないが、盾にはなる。
それをすべて断るなどあり得ぬ話。
むろん、そうすれば褒美も「黄金の盾」の独占できるが、それはその利より危険性の大きい。
「さすがにそれは……」
「もし手に負えなかったら、助けにいってやるから、そういうことにしろ。カッシーニ」
結局、強引に押し切られてしまう。
だが……。




