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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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惨劇の始まり

第三洞窟ヴァシスの狩場、通称スパティウムはいつもどおり多くの冒険者で賑わっていた。


ここは駆け出し冒険者の訓練場というだけではなく、チームを組み直した者たちの確認の場、そして、ベテラン冒険者たちのとっては効率よく金を稼ぐことができる場所でもある。


だが、これだけの数の冒険者が何年も自由に狩りを続けていれば魔物たちがどれだけいようがそろそろ死滅するはず。

だが、実際にはそうなっておらず、まだまだ多くの魔物がスパティウムを徘徊している。


なぜか?

理由は簡単、冒険者自身が魔物を死滅しないように管理していたのだ。

それを取り仕切っていたのは、レジェンド冒険者アベルフェルダ。


どのレベルの冒険者であっても、このような場所は必要なのだ。


そう主張した彼はクヌピやマイムーの巣が密集する広場から枝分かれする多数の洞窟を禁漁区としていたのだ。

むろん、それが正しいかどうかについての賛否はある。

だが、アベルフェルダが言うように、駆け出しの冒険者にとってそれほど強くない魔物相手に経験を積む場は必要であり、冒険者組合もその価値を承知していたから、その存在を黙認していたのだ。


だが、アベルフェルダを含めて冒険者たちは知らない。


彼らが禁漁区としていた小洞窟のいくつかは冒険者たちが到達していない奥地への抜け道になっていることを。


そして、そこからスパティウムの情報を手に入れていた魔物たちの指揮官たちはある作戦を立てていたのだが、最近になりようやく準備が整った。


他の洞窟で起こった転移魔法を使用した撤退と襲撃の最終段階である。


異変はまずスパティウムにある本道に繋がるふたつの洞窟のうちの奥のもの付近で始まる。


突然、五体のアグリオスが湧きだすように現れる。


アグリオス。


それは猪男ともいうべきもので巨大な錘を振り回す魔物である。

しかも、見た目とは裏腹に非常に俊敏で足を速い。

余程の距離がなければ逃げ切れないため、遭遇した場合、必ず戦わねばならない。

ただし、通常は単独行動をしているため、上級の冒険者パーティなら十分に仕留められる相手とも言える。

だが、今回はまとめて七体。

さすがにこれだけまとまった数になると、簡単に倒せるとは言い難い。


当然、逃げられないと悟った付近にいた冒険者たちは戦闘態勢に入ったものの、遠くからそれを見た冒険者の大部分は敗走を始める。

そこには、有名チームもふたつほど含まれていた。

アベルフェルダ率いる「十人の酔っ払い」、そして、「黄金の盾」である。


だが……。


「……見たところ、今戦っている連中ではアグリオスは倒せない。当然猪どもはそのまま突進してくるが、あの混乱具合では奴らが来るまで俺たちは脱出できない。背を撃たれるだけだ」

「だが、俺たちだけでは七体のアグリオスを倒すのは無理だ」

「いや。大丈夫」


「アグリオスに一撃を加え、怯んだところを向こうの出口から抜け出す」

「なるほど。逃げ出すだけならなんとかなるか」

「そういうこと。それに……」


「アーベルはこのような場面でいつも言っていた。安全に見える方には罠がある。逆に、危険に見える方こそ安全」

「そうだったな。そして、俺たちはその言葉に従い生き残った。あの言葉が今回も正しければ、我々の向かうべきは……」


そう。

確かに彼らはアーベルを裏切り、切り捨てた。

だが、それはアーベルの力を見誤ったのではなく、どちらかと言えば嫉妬していたのだ。

だから、ここでセルシウスがアーベルの名を出しても、冒険者の世界ではよくある別れた者の名を出すのはチームのご法度などということはない。

むしろ、それを踏襲する。

なにしろ、彼らはそうやってここまで来たのだから。


そして、セルシウスの提案どおり、「黄金の盾」は反転し、暴れまわるアグリオスへと急進する。

一見すると、無謀に見えるその判断だったそれであるが、結果的にこれが多くの者たちとの命運の差を生むことになる。


「一撃を食らわしたら、すかさず突破する。あり得ないとは思うが奴らも人間の言葉がわかるかもしれない。ここで決めていく。では、いくぞ」


ダレストがアグリオスたちの顔に火球を撃ち込んだ瞬間、三人は無言のままその脇をすり抜ける。

そして、そのままセルシウスを先頭に全速力でその場を離脱する。


本道に入り、出会ったいくつかのパーティにスパティウムでの出来事を話し、しばらく行動を共にすることにして、用心しながら出口へと向かう。


五日後、魔物たちに出会うことなく出口に辿りついた「黄金の盾」のメンバーはそこでとんでもない情報を耳にすることなる。


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