悪い予感
ふたりの仲間と話しながら、アーベルは別のことを考えていた。
もし、自分が魔物の頭だったら。
転移魔法という武器を手に入れた。
そして、人間はその魔法を持っておらず、さらにその対処方法もなさそうだ。
実験的にいくつかの部隊を送り込んだ。
最終的な結果はわからないが、少なくても転移直後の様子を見れば成功していると思って間違いないだろう。
では、第二段階。
転移魔法を使った本格的な攻勢。
本来であれば三つの洞窟すべてで攻勢に出たいところだが、魔術師にそこまでの余裕はない。
ひとつ。
そうなった場合、どこを選定すべきか。
第一洞窟スコディーで俺たちは転移を見た。
そして、第二洞窟コラシで転移魔法を使った襲撃が二回あった。
そうなれば、次は第三洞窟ヴァシス。
そう考えられる。
だが……。
俺が魔物の頭なら、第一洞窟スコディーを攻勢場所にする。
その理由は、すでに洞窟から魔物の巣への扉は壊されており、何があろうが問題はない。
だが、第二、第三洞窟は攻勢に失敗し、再反撃を食らった時にそのまま巣に乗り込まれる可能性がある。
だが、それはあまりにも消極的。
そうすると、残りふたつということになる。
どちらにしても、本格的な攻勢の前に第三洞窟ヴァシスにも魔物を転移させて送り込まれることだろう。
あそこには、アベルフェーダがいる。
しかも、あいつが根城としているのは弱い魔物しかいないが数は多い、狩場のような場所。
十分にぶつかる可能性がある。
さらに、おそらくカッシーニたち「黄金の盾」の残党も慣熟訓練として、あの場所で活動している可能性が高い。
「……これは見ものだな」
「何が見ものなのだ?アーベル」
思考の辿り着いた先にあるその出来事に思わず呟いてしまったその言葉にタウルスが反応する。
むろん、何事もなかったかのようにアーベルは右手でそれを制す。
そして、酒を含みながら、更に思考を進める。
クロエたちを襲ったのは二体のマイムー。
狩場を襲ったのは、ネクロドラコに率いられた多数のネクロエデッセ。
強いが数が多くないウルリクルリやギーガスを実験段階で戦場に放り込むかといえば、微妙。
そうなると、あり得るのはネクロエデッセとギーガスの中間程度の強さで数が多い魔物ということになる。
リュコスかアグリオス。
だが、これはどちらであってもかなりの強敵。
むろん、単体の強さだけならアグリオスが上だが、リュコスはほぼ確実に集団で行動する。
しかも、知性もあり、中には魔法を使える者もいる。
戦う上でどちらが厄介かといえば、言うまでもなく後者。
こちらが不意打ちをするならともかく、リュコスの大集団に不意打ちを食らったらカッシーニたちはもちろん、アベルフェーダだって厳しいだろう。
もしかしたら、この時にアベルフェーダが転移魔法対策を生み出すかもしれないが、下手をすれば……。
そして、アーベルが心の中で呟いたそれは、三日後、現実のものとなる。




