そのチーム名は
「なあ、アーベル」
「そのアベルフェーダだが、俺たちはまたそいつの戦いを見たことがない。それどころか、会ったこともないのだが、そんなにすごい奴なのか?」
アーベルはそう問うたタウルスに目をやる。
「十四歳から洞窟に潜り、三十歳を過ぎた今でも現役で魔物と剣を交えている。それだけ十分凄いと思うぞ」
「そして、俺たちが知っている魔物たちの特徴や強さのランキングはアベルフェルダがつくったもの。三つの洞窟の最初の一日は安全に行動できるようになったのもアベルフェルダの功績」
「だが……」
「奴は冒険者の本来の目的である魔物の住処がある最深部を目指していない」
「そういう点で、俺は奴を評価していない」
「だが、奴が弱いのかと言えばそうではない。奴自身も非常に強い。さらに歴代の奴のパートナーも皆強い。魔術師も相当な使い手だ」
「要するに、奴はここで魔物を狩る生活をすることが目的。奴と指向を同じくしている者が集まり集団になっている」
「だから、奴は俺たちのように最深部を目指す者の誘いには絶対に乗らない」
「なるほど。そうなるとアベルフェーダは俺たちにとってどうでもいい存在だ」
「そして、問題なのは魔物の住処を狙うチームで一番強いチームだ。それで、どうだ?」
「スコディーでは、『黄金の盾』、それに続くのは『ウーゾ』、『永遠に続く祝杯』、『白銀の剣士団』だったな。コラシでの三強は『スーブラキ』、『墓知らず』、『虹色の夜明け』。ヴァシスでは、『輝く酒樽』、『ギガンテス』、『闇を照らす光』、『千の刃と万の光』が強いとされているようだ」
「もっとも、俺が実際に戦いを見たのは同じ洞窟だったチームだけだが」
「そして……」
「まもなく、コラシの勢力図が塗り替えられる。俺たちチーム『負け犬』がトップになるのだ」
アーベルがそう言ったところで、兄弟剣士が手を挙げる。
「アーベル。そのことなのだが、やはり名前は真面目に考えた方がいい。本当に一番になるのなら、なおさらだ」
「俺も兄貴に賛成だ。『負け犬』はいかんだろう。やはり」
アーベルはじっとりとした目でふたりを見る。
そして、彼らが本気でそれを言っていることを察し、小さなため息をつく。
「まあ、俺は名前など何でもいいと思うが、おまえたちがどうしても変えたいというのなら、本格的に探索が始まるまでに考えておいてくれ」
「ちなみに、おまえたちのチーム名は何だったのだ?」
「洞窟の征服者」
「良い名だ。私はそれでもいいぞ」
「冗談ではない。これは魔物に狩られた者たちのチーム名だ」
「それは残念だ」
「参考のためにひとことつけ加えておく。これは冒険者仲間でよく言われる格言なのだが、『大層な名前をつけると成功しない。逆に名乗るのが恥ずかしい名をつけると成功する』。だが、これが全くの迷信なのかといえば、そうでもないことは、先ほどの強いチーム名からもわかる。恥ずかしい名前のオンパレードだろう」
「ちなみに、アベルフェーダのチーム名も『十人の酔っ払い』だ」




