黄金の盾の真実
「なあ、アーベル」
アルキタスは新しい酒を口に流し終わると、アーベルを見やる。
「あんたたちの仕事を見たと言っただろう。その時の感想を言ってもいいか」
「ああ」
「俺たちがわかるのは剣士だけだが、もうひとりの剣士なら俺の方が強いと思った。いや。タウルスよりも下に見えた」
「違うか?」
「違わない」
「ただし、第二剣士のカッシーニの代わりにアルキタスやタウルスが加わっても、『黄金の盾』が強くなったかといえば、ないと言えるだろう」
「なぜだ?」
「チームは単純に強い者が集まればいいというものではないのだ」
「俺が一番強い敵と戦う前に、雑魚はカッシーニが片づける。それによって俺は力を温存し一番の敵と戦える」
「では、同等の力の者がふたりいたとき、片方の力を温存できるようにもう一方が雑用を進んでおこなうかといえばそうはならない。下手をすればどちらが主導権を取るかで揉めることになる」
「その点、明確に差があれば、そのような揉め事は起こらない」
「それにあいつらは長い間一緒にやっている。お互いに相手の力量、癖、思考パターンを知っている」
「これは非常に重要だ」
「だが、奴らは能力を失ったアーベルを簡単に捨てた。つまり、そう思っていたのはアーベルだけだったのではないのか?」
もちろん、俺が怪我をして働けなくなったということであれば、あいつらも違った対応をしただろう。
だが、実際にあいつらがやったのは俺から能力を奪ったのだ。
あの場で殺さなかったのが不思議なくらいだ。
アーベルは心の中でそう呟く。
いつかは真実を話す。
だが、それは今ではない。
「あいつらにとって必要としているのは俺の代わりになる剣士。できれば、魔法を扱える者。まあ、仕方がないといえる」
「だが、たとえ俺と同等の強さを持つ剣士を見つけ、相応の魔法の使い手である魔術師を加えても、今までと同じような戦果は得られないだろうな」
「なぜ?」
「それは、おまえたちが俺と会ったその日に口にした自分たちの弱点。それがあいつらにもやってくるからだ」
「そして、あいつらにとって不幸なのは、おまえたちと違い、最高位の冒険者チーム『黄金の盾』という看板を背負っていること」
「駆け出しの冒険者なら弱小の魔物を狩っているだけでもいいが、奴らはそうはいかない。洞窟内最強の魔物と対峙せざるを得ない」
「当然待っているのは、敗北。下手をすれば死ぬ。もっとも、あいつらの実力でそこまで辿り着けるのかはわからないが」
「死ねばいいと思っているのか?」
「いや。奴らは俺の昔の仲間。俺の関心はおまえたちが強くなることだけだ」
そう言ってアーベルは薄く笑い、器に残っていた酒を飲み干す。
「ちなみに奴らが悲劇を免れるにはどうしたらいいのだ?」
「さあな。それは奴ら自身が考えることで追い出された俺が考えることではない」
「まあ、アベルフェーダが加わりでもすれば問題はすべて解決するだろうが、あのチームにアベルフェーダが自チームを解散してまで加わるだけの魅力があるとは思えないのだが」




