腕試し
翌日、三人は洞窟に潜る。
冒険者はその決まりとして、洞窟に潜る際に冒険者に届けを出さなければならない。
その際に、チームの名前が必要となるのだが……。
「さすがにそれはいかんだろう」
「全くそのとおり。アーベル」
組合の係員に対してアーベルが口にした冒険者名に対して、アルキタスとタウルスが口を尖らせて抗議する。
だが、アーベルはその猛烈な抗議も右から左に聞き流す。
「いいのだ。今の俺たちにピッタリだし、正式に探索を始めるときは相応の名前にすればいいのだから」
「だが、『負け犬』はないだろう。『負け犬』は」
「全くだ。係員のお姉さんも吹き出していたではないか。しかも……」
「なんで、アーベルが飼い主で、俺たちがその飼い犬役になるのだ」
「いやいや、お姉さんは俺の説明を聞いて納得するように大きく頷いていたのだ。それが世間一般の評価だろう」
「納得いかん」
「同じく」
「まあ、そう言うのなら、それだけの実力を見せてくれ」
ふたりの少年の抗議をそう言って蹴り飛ばしたアーベルは薄く笑う。
「できるか?」
「もちろんだ。それで、どこに行くのだ?」
「むろん狩場だ。あそこはまだ雑魚がウヨウヨいるだろうからおまえたちの力を見るのにちょうどよい」
狩場。
それは冒険者仲間がそう呼ぶ洞窟内のエリアのひとつ。
洞窟内とは思えぬ広い空間は多くの抜け道があり、魔物たちが絶え間なく現れる。
むろん、魔物たちがやって来る通路を塞げば、その侵攻は止まる。
だが、魔物を狩ってその褒美で生活している冒険者たちにとってそれは自身の収入源を断つことに等しい。
しかも、ここにやってくるのは複数で行動し知性もあるが戦闘力は最低の魔物であるクヌピがほとんど。
たまにマイムーも現れるが、それ以上の強さがあるものは来ない。
いわゆるレベルアップには打ってつけの場所。
当然過ぎるくらいの冒険者たちの反対により、今もそのまま残されている。
「力試しにはいいだろう?」
「ああ」
「では、よく見ていてもらおうか。俺たちの力を」
自身の問いに対するアルキタスとタウルスの自信満々の言葉に頷きながら、アーベルは心の中こう呟く。
その半分でも実力があれば合格。
まあ、こいつらはいい奴。
もし、ダメでも鍛えてどうにかなりそうなら仲間にすることにしようか。
だが、アーベルの予想は大きく外れる。
たしかにそこに現れる魔物は弱い。
だが、それを差し引いても、ふたりの力は狩場にいる他の者を圧倒している。
「……若干大味で隙も多いが大口を叩くだけのことはあるな。今はともかく、少し前までならふたりともカッシーニより上」
ただし、それと同時に彼らの弱点もすぐに見つけるところはさすが勇者と言われるだけの眼力というところだろうか。
「……最低限の連携さえない。お互い気にかける兄弟であれなら、他人であればさらに酷いものとなるだろう」
「まさに彼ら自身の言葉どおり」
「まあ、それは手綱を引く者がいればどうにでもなる」
「当然合格だな」




