最初の仲間
数日後、冒険者組合本部にある掲示板に同行者募集のチラシが張り出される。
第二洞窟「スコディー」探索をおこなうパーティの仲間として有能な剣士ふたり、相応の魔法が使える魔術師ふたり、索敵及びマッピング経験者を同行者として募集。
採用は適正試験をおこなったうえで決定予定。
なお、報酬の分配等は採用決定時に相談。
名前も出さず、数多くの同行者募集のチラシの一枚でしかなかったため、当然魅力的な条件のないそれに応募する者はない。
「……まあ、当然だな」
酒場でその知らせを肴にひとり酒を飲んでいたアーベルの両脇にふたりのいかつい男が座る。
「あんた、勇者アーベルだろう」
アーベルはまず右、そして、左の男を見る。
……若いが相当鍛えている。
……どこかの用心棒であれば、とても敵わないな。
薄く笑い、そして、酒を飲み干すとアーベルは口を開く。
「まあ、アーベルであることは間違いないが、現在は勇者の上に『元』という文字が付く」
「なぜだ?」
「まあ、色々あった。それで……」
「その元勇者の俺に何の用だ?」
「あんたが同行者を募集しているという話を聞いたので確かめに来た」
「ほう」
アーベルは目を細める。
「そうだと言ったら?」
「当然申し込みをする。弟と一緒に」
「おまえたちは兄弟なのか」
「そうだ」
「なるほど」
……見た目だけなら合格だな。
……では、篩にかけるか。
「言っておくが、今俺は剣が使えない。それでもいいのか?」
「冒険者最高の剣士であるあんたが剣士を募集するのはそれ以外ないと思った。それに、今持っている剣もおもちゃのようだからな。それで……」
「その理由を聞いていいか?」
「相手の能力を奪う魔法具にやられた。大剣を持つ力。それから魔力をそっくり奪われた。そして、その直後、パーティをお払い箱になった」
「それで、ひとりなのか」
「まあ、そういうことだ。それでもいいのか」
「構わん」
「というより、望ましい状況だ。それは」
「それはどういうことだ?言っておくが、だからと言って報酬が高くなると思うなよ」
「そんなものはどうでもいい」
「俺たちは……」
そこで語られたのは、兄弟剣士が経験した敗北の歴史だった。
「……俺たちは強かった。連戦連勝。このままいけば、俺たちこそが勇者の称号を得られると思えるほどに。だが、洞窟の深みに入り、出会う魔物のレベルが上がり、数も多くなってくると全く勝てなくなった」
「俺たちは考えた。一緒の魔術師がヘボだからだと。そこで魔術師を変えた。だが、結果は変わらない」
「そして、何が問題かわからぬうちに取り返しがつかないことが起きた」
「まあ、その流れならパーティ全滅だろうな」
「そういうことだ」
「俺たちは剣士五人。魔術師ふたりで構成されていたのだが、魔物の大集団に囲まれ、残ったのは俺たちふたりだった」
「まあ、俺たちもズダボロだったが」
「それで、負け犬同士一緒にやりたいということか」
アーベルが黒い笑みでそう言うと、兄弟剣士だというふたりのうちのひとりが首を振るう。
「いや。逃げ帰ってきたところでようやく気づいた」
「俺たちは個々に目の前の敵にただ剣を振るっていただけだった」
「強い敵と戦うには策を考え、俺たちに戦い方を命じる者。真のリーダーが必要なのだと」
「それが俺だと」
「そうだ」
「実をいえば、あんたたちの戦いを何度か見た。むろん、あんたが剣を振るいながら仲間たちを仕切っていたのも。俺たちは剣を振るう。あんたは命令をしてくれ」
……剣を振り回すことしかできそうもないこの兄弟剣士だが、余程痛い目をみてきたようだな。
……だが、それでもそこに気づくとはたいしたものだ。
アーベルは小さく頷く。
「いいだろう」
「とりあえず剣の腕は後で見せてもらうことにして、名前だけは聞いておこうか」
「俺はアルキタス。弟はタウルスだ」
「では、とりあえず出会ったことに乾杯しようか」




