44話 魔王と憂鬱と色欲と嫉妬と暴走と進化
~前回のあらすじ~
明らかにヤバい塔に入った。
入った瞬間後悔した。
無理を言ってまで復活した事を、これまでしてきた事を、全てを。
コレまで妾がしてきた事は全て無駄だったのか、必死に頑張って来たのに無駄だったのか。
こんな世界...壊れてしまえ。
《 アルティメットスキル『憂鬱』を獲得しました 》
妾達が入ってきた事にも気付かずに、連中は残虐の限りを尽くしている。
「ハハハ、笑え笑うのだ!教えに従え!」
そう叫びながら焼きごてを、傷だらけでボロボロの男の腹に押し付けているどこかペストに似た祭服姿の男。
「救世主様の!平穏を下さった真の救世主様の教えに従い、笑え!それが出来ない貴様ら出来損ないは死んで詫びろ!」
トゲの生えた細い棒でグチャグチャと生きた女性のハラワタを抉る先程の男と似た服装の女。
その他、思いつく限りのあらゆる拷問が訳の分からない事を叫ぶ者達によって行われていた。
「『天空魔法』風神雷神!!この不快な景色を消し飛ばせ。」
そして、次の瞬間それらが突如現れた暴風と雷により消し飛ぶ。
当たり前だ『天空魔法』は『風魔法』つまり通常の能力を超えた特異能力、芋虫は簡単に入手しなおかつ沢山持っているので分からなくなりがちだが実際は長命種のエルフや魔族、その中でも高い才能を持つものが修行に一生を捧げるつもりで鍛え続けようやく手に入る様なとんでもないスキルである。
そしてそのスキルを魔王の有り得ない程に強化された魔法攻撃力で、発動させたのだ。
荒れ狂う暴風は全てを吹き飛ばし、破滅の雷は全てを砕く。
はるか地平線の先まで妾を先端とした円錐状に荒れ果てた更地が広がっていた、完膚なきまでに破壊された大地はかつて街や塔があったなど想像も出来ない。
それでも妾の気は少しも晴れない、この程度で晴れるわけが無い。
全て、全てを壊してやろう。
この手で。
《 感情が一定レベルを超えました『憤怒』が強制発動します。
警告、『憤怒』の効果により発動時間に比例し理性が崩壊します。
スキル発動の停止を推奨します。 》
「ベ、ベルちゃん...」
「クケハハハハハハ!死ねシネしね、全て死ね」
「落ち着いて、ベルちゃん!」
「ダマレレレェ!!『暴食』!!!」
突如大地を突き破り、巨大な口が現れる。
そして、その口がかおるんの下半身を喰いちぎる。
「うふふふふ、ベルちゃん!ベルちゃん!これでずっと!ずっと一緒よ!これで2度と離れ離れにならないですむね!一つになろう、ベルちゃん!」
半分になってしまったかおるんが、笑いながら嬉しそうに叫びだす。
『バクン』
禍々しい巨大な口は、無情にもその残った上半身すら喰らい尽くす。
その瞬間電流が走り抜けたかの様に、かおるんの記憶が思いが妾の中を駆け巡る。
《 『憤怒』の発動を停止しました 》
ああ、そうか...かおるん貴女も既に壊れてたのね...
いくらコチラの世界に来る際に勇者として力を与えられ肉体が強化されていたとしても、精神は強化されない。
確かに高度の封印系スキルは、肉体の時間経過すら止める。
だが精神の時間は進み続ける。
指1本動かせない状態で1人っきりで数10年、場合によっては数100年いたんじゃないかな?
その間ずっと、妾の事を思い続けてくれてたんだ...
《 アルティメットスキル『色欲』を獲得しました 》
これはかおるんの...
《 容量超過発生、精神及び魂が崩壊します。
また、崩壊に伴いステータス値が減少していk...
上位存在からの介入を確認、魂が補強されました。
崩壊が停止します 》
貴方は、妾が狂う事すら許してくれないのか。
何故妾にはこんなにも何も無いのだ、ただ妾は皆と平和に暮らしたかっただけなのに。
なぜだなぜだなぜだ、もっと、もっと力があれば。
貴方の様になれたなら...
《 『嫉妬』を獲得しました。
アルティメットスキルを一定数獲得を確認、作業速度が加速します。
終了までおよそ八日です。
容量超過再発生、補強が耐えきれません。
精神及び魂が徐々に崩壊します。
また、崩壊に伴いステータス値が徐々に減少していきます。
ステータス値が零になると存在が消滅します、タイムリミットは八日です。
理性の低下及び精神の破損により、肉体を押し留める事が困難となりました。
暴走を確認、肉体の過剰再生、過剰成長が始まります。》
《 魔王ベルゼビュートが深淵の王アバドンへと進化します。
エクストラスキル『狂気の悲鳴』を獲得しました。
エクストラスキル『絶望の啼泣』を獲得しました。
エクストラスキル『忿怒の絶叫』を獲得しました。
エクストラスキル『破滅の歌声』を獲得しました。
称号『深淵の主』を獲得しました。
称号『破壊の天使』を獲得しました。》
「キ キ゛ィ イ゛ア゛ァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
その悲鳴と共に魔王の小さな体躯は弾け、そして急激に肥大化していく。
その体長は軽く数100mにも及び、今も尚成長を続けている。
闇よりも深い漆黒の体躯を埋め尽くすようにビッシリと人間の顔が浮かび上がり、その怒りや悲しみ苦しみに満ちた顔からは様々な怨嗟の声がほとばしる。
憎悪、嫉妬、憤怒、憂鬱、絶望、悲哀、抑え切ず溢れ出した様々な感情の様にブクブクと歪に膨れ上がった、その姿は......
さながら巨大な芋虫のようであった。
魔王編が、そろそろ終わってしまいそう...




