1話
「おはよう作者さん」
「あぁ、おはよう叶野」
私はファンタジー小説を書こうとした時にメインヒロインにする予定だったキャラの叶野 夢美に起こされて目を覚ました。
「…ってあれ?なんで…?」
あたり一面真っ白、何もない、私の部屋はどこにも無かった。
「小説のキャラになっちゃったみたいだね、まぁ元々ファンタジー小説だったんだし、そんなこともあるって」
叶野がそんなことを言っている、決して私が書いているわけではない。叶野が私の目の前で喋っているのだ。
「え…?小説のキャラに?」
「だって、昨日、登場人物のところに、自分の分まで書いてたじゃない?」
確かにそうだった、私は自分の設定まで登場人物のところに書いてしまったのだ、だからといってそんなことで小説の世界に入ってしまうはずはないのだが…
「そ、そんなはず…」
「周りを見てみればわかるでしょ、ここはあなたの小説の世界よ」
周りは一面真っ白、現実とは思えなかった。
「じゃ、じゃあこれから私はどうすれば…」
「この小説がちゃんとエンディングを迎えれば帰れるんじゃない?」
「そんなこといったってここには二人しか居ないじゃないか」
そもそも私には小説のエンディングなんて書けない、どうすればこの小説が終わるかなんてわからない。
「あなたは作者なのよ?ないなら作ればいいじゃない」
「作る…?」
「そうよ、紙に鉛筆で文字を書くだけで、小説には物が生まれるの、あなたはそれが出来るでしょ?」
「そ、そんなこと…」
「やるだけやってみなさい、はい紙と鉛筆」
一昨日作った奴だ、意図しない伏線に自分でも驚く
「あ、あぁ、わかった…」
紙に大きく【りんご】と書いた。
その瞬間、紙からポンッと煙と共にりんごが出てきた。
「おお…、これ食べれるのか…?」
私が驚いているとすぐに
「いただきっ」
叶野が私の手からりんごを横取りして食べた。
「うん、りんごの味がするよ」
「お前、りんご食べたことないだろ…」
自分で作ったキャラに突っ込みをいれるのはどうなんだろう、そう思いながら、私は叶野からりんごを取り返し、そして食べた。
「おぅ、本当にりんごだ…」
「あー!」
叶野が大きな声を上げた、私が何か変なことしたか?今の私には叶野が何を考えているのかはわからない。
私が叶野の方を向いてしばらくの沈黙のあと、叶野は言った。
「作者さんと間接キスね!」
「おまっ、そんなこと今はどっどうでもいいだろ!」
動揺する私にくすくすと叶野が笑う。こんな調子でこの小説はエンディングを迎えられるのだろうか…少し不安だが、すごく楽しみだ。




