9 恋心
どうぞよろしくお願いします。
アトスとダーシュが顔を見合わせた。
「ジュディスの友人が狙われているのです」
イリーナの小さな声、だけど真剣な表情と口調にアトスが驚いてイリーナを見た。
「どういうことだ?
父の方からは心配することはないと」
「それはオブリスの方の話ですね。
王都の学園の方ではジュディスが退学して、モーリス・モンテル伯爵令息と婚約したことになっていて、大変なことが起きているんです!」
アトスとダーシュは周囲を見回し、友人や家族との接見のための部屋へ3人で移動した。
そこで騎士2人は学園で起きていることを知ったのだ。
ジュディスの友人達がアンナ・パトーキ伯爵令嬢、カーライル侯爵夫人、そしてモンテル伯爵令息の悪巧みでカフェの個室に呼び出され、そこにモーリスがいて彼と逢引きしたという証拠をでっち上げられようとしている……と。
「おひとりはアンナの名前で呼び出すようですが、他の方はジュディスの名で呼び出そうとしているそうです。
今、ジュディスはヴァイス男爵領に静養に行っていると、王都、学園では噂されていますが……、本当はオブリスにいますよね。
そのジュディスの名を騙って彼女の友人を呼び出そうとしています」
イリーナの言葉にアトスは頷いた。
「ああ、そうだ。
父の手紙には、姉のマリアンヌとジュディスとシャルルがヴァイス男爵領に静養に行っていることになっているようだと」
ダーシュが口を開いた。
「まだよくわからないところはあるが、とりあえず友人の令嬢を守るということなんだな!
2日後の午後。
休めるか聞いてみる」
そして、部屋を出ようとするとアトスが声を掛けた。
「私も一緒に!」
「では、一緒に休みをもらえるか聞いてきます!」
ダーシュが行ってしまった。
小さな接見室にイリーナとふたりきりなことに気が付いたアトスは、イリーナを誘って部屋を出ると、エントランスを抜け、庭のベンチに腰掛けた。
「ジュディスと仲が良かったのですか?」
「学年は私がひとつ上になるので、そこまでは。
でも、共通の友人はいましたので、お互いは知っていました。
まあ、友人とまでは……という間柄でしょうか。
でも、ロバートと婚約したなら、もう身内というか友人ですわ。
それに、私、ジュディスのこと好きでした。
生徒会に入ってくれないかなと思ってましたし」
「それはありがとうございます」
「その……、ひとつ聞いてもいいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「アトス様は何故……、その婚約や結婚をなさらないのですか?」
イリーナの頬が耳が赤い。
アトスがびっくりした顔をしてから、面白そうに笑った。
「そうですね。
王族の方に専任で仕えていることが多く、そんな暇がなかったからです。
今はたまたま専任を外れていて、のんびりしていますが、もう、この歳になると、どう女性を誘ったらいいかわからなくなってしまいました!」
アトスは自分で言いながら笑ったのだが、イリーナが笑ってないことに気づき慌てた。
「ここは笑うところですよ!」
「いえ、アトス様はすっごく素敵ですわ!!」
アトスはびっくりしてから苦笑する。
「30過ぎた男をからかわないで下さい」
「からかってなどいませんわ!
素敵なものは素敵なんですっ!!」
そこへダーシュが戻ってきた。
「ここにいたのか!
休みは全日大丈夫だ!
仮で押さえてきた。
後でアトスも正式に申請しておいてくれ」
「ありがとう、ダーシュ」
イリーナが立ち上がる。
「では!
当日は休みの日の服装で!
でも、念のため、剣をお持ちになって下さい!
マクダウェル公爵家から今日か明日までには連絡を差し上げますわ!」
イリーナは顔を隠し気味にして小走りで行ってしまう。
「イリーナと何を話していたんですか?」
ダーシュに聞かれて……。
「えーと、その、王城での出会いがあるかないか、とか?」
「……それは俺には聞きにくいことですね。
それであいつ、あんなに顔を赤くして恥ずかしがってたのか!」
読んで下さりありがとうございます。
アトスは30歳になったばかりです。
イリーナとは12歳違い。
姪と同世代だしね。
アトスはまだそういう目で見ておりません……。
頑張れイリーナ!
ダーシュは23歳です。アトスは大先輩なんですが、同僚として友人として気が合ったようで、とても仲が良いのです。




