6 緊急招集
どうぞよろしくお願いします。
モンテル伯爵家に行き、コートも脱がずにエントランスでモンテル伯爵夫人に手紙を手渡す。
「母からモーリスにです」
「エルダ、サーザ、お茶でもいかが?
今、モーリスも呼びますわ」
「ごめんなさい、伯母様、私、友人を待たせてますの!」
そう言って踵を返し、サーザに守られるように馬車に乗り込む。
馬車がモンテル伯爵家を出る時、エントランスから玄関へモーリスが小走りで出てきたのが見えた。
馬車は門から外へ出た。
エルダはほっと息を吐いた。
パトーキ伯爵夫人は慌てて戻ってきて侍女に命じてアンナの身の回りの物をまとめ始めた。
学園で使う物、制服、アンナが言っていたワンピースなど、詰めさせる。
「どうしたんですか?
アンナがどこかに?」
マシューが騒ぎに気付いて自分の部屋から出てきた。
「ああ、マシュー!
カーライル侯爵家から少し距離を取りましょう……。
でも、アンナはもうダメ。
すっかりオフィーリア様に心を囚われてます。
何か一緒に恐ろしいことをしでかすのではと……。
私達はアンナを婚約者の家にお任せし、離れます。
私もオブリスへ一緒に行きますわ!」
「え?
それは……」
マシューが慌てた。
「も、もうひとりで行くものと!
あ! お母様はお父様と領地へ一緒に行ったら?」
「領地……、そうね。
そのほうが私が王都を離れているという証人が多く確保できるわね。
マシューも気を付けるのよ!」
「……もう一度カーライル侯爵家へ?」
「いえ、侍女に届けさせるわ。
私は領地へ行く準備をします。
あ……、手芸用品店に紹介状を書かないと……」
「紹介状?」
「アンナのハンカチを依頼した手芸用品店よ。
侯爵家でも頼むんですって!」
「え?」
パトーキ伯爵夫人はさっと自分の部屋の方へ歩いて行ってしまうが途中で立ち止まりマシューを見た。
「今日は家にいるの?」
「いえ、オブリスに行く前に友人に会ってきます」
「気をつけてね!」
マシューは家を出た。
何かカーライル侯爵家で動きがあったらしい。
エルダとサーザならどうするか?
足は自然に図書館へと向いた。
約束の日ではなかったがイリーナがいた。
「あれ? マシュー、オブリスへは?」
「明日だ。
特急の出る日だから」
「そっか……。
なんか羨ましいな」
「何言っているんだ。イリーナだって王城の女官に決まったんだろ」
「まあね!
ふふ、王城の仕事楽しみにしてるのよ。
王太后付きになったらいいなー」
「なんで?」
「だって王妃ほど公務はないし、けっこうあちこちお出掛けになっているそうよ。
お供で護衛騎士についてもらって遠出なんて、楽しそうじゃない!」
「仕事に楽しさを求めるのか……」
「そうよ! 悪い?」
「いや、いいと思うよ」
「うーん、そんな楽しいオブリス行きの前にどうしたんだね?
マシューくん?」
イリーナが笑う。
マシューは思い出しつつ言った。
「カーライル侯爵家に行った母が妹のアンナを置いてというか、そのまま預けて帰ってきたんだ。
『カーライル侯爵家とは距離を置く』と」
イリーナが眉を顰める。
「何かあったの?」
「それがわからないから……。
エルダとサーザがここに来ないかと……」
「約束もしていないのに?」
「でも、君には会えた。
ルイザ達に会えないかな?」
「うん、大丈夫と思う。
ダグラスもこの時間なら王城から戻ってきてるんじゃないかな?」
そこへサーザとエルダが現れた。
「やっぱりいたな」
サーザが苦笑しながら言った。
エルダが挨拶もなしにイリーナに言った。
「カーライル侯爵家の馬車は図書館に停めておくことにする。
閉館の時間までに戻ってくれば大丈夫」
読んで下さり、ありがとうございます。
という流れでハンカチの依頼がジニーの所へ来たわけですわ。




