1 祖父と弟との再会
第7章が始まりました。
どうぞよろしくお願いします。
「お爺様……、シャルル!」
「お姉様!!
お爺様! お姉様がいる!!」
シャルルがジュディスに抱きつく。勢い余ってひっくり返りそうになるのをロバートが後ろから支えてくれた。
「シャルル、心配かけてごめんなさい」
「ううん!
家出して良かったんだよ! お姉様は!」
「私、ここでは『ジニー』って呼ばれているの」
ヴァイス男爵がそばに来て、ジュディスの頬に手をやさしく添えた。
「ロバートくんの婚約者のジニーさん、だね」
ジュディスが頷く。
「でも、ジュディスに戻るための準備もメージさんやロバートに協力してもらって用意しているの。
ジュディス・ロイヤーの名で、3月に卒業認定試験を受けます。
その後にジュディス・ロイヤーは夏に家出して、オブリスで働いて自立した生活をし、大学進学を目指して勉強を続けていたと証明して……。ロイヤー子爵家から出るつもりです。
私の名前がモーリス・モルテン伯爵令息と婚約したって、最近聞いたの。
私の意思ではないと、証明するつもりです」
「頑張ったんだね」
ジュディスがにっこり笑った。
「王都にいる時より、ずっとずっと楽しかったです!」
ヴァイス男爵は大笑いした。
「さすが、ジュディスだ!」
笑いが落ち着いてから、ヴァイス男爵が言った。
「マリアンヌが10年前のことに気づいて、ジュディスに謝りたいと言っていたよ。
ロイヤー子爵のことも離れて見ることができるようになり、ジュディスとシャルルのこと、王都での他家との付き合いなど反省して、これからどうするか考えているようだ」
「お母様が!?」
「お姉様!
シャルルもお父様の所に戻りたくないです!
お母様とお姉様を悪く言うお父様なんて……」
「……シャルル」
「お前は自分が耐えればいいと思っていたようだが、家族の歪みって奴は、守っている小さな子にも影響を与える物なんだよ」
ヴァイス男爵の言葉にシャルルを涙目で見つめるジュディス。
「シャルル、ごめんね。
私、あなたと……」
「わかってる。
お父様とお母様と……。
お姉様と僕が仲良くならないようにしてたんだよね。
お姉様が頑固だからって!」
「ふふっ!
シャルルも私のこと、そう思ってたの!?
そうよ、私は頑固だから、嫌なことは嫌って!!
ドカーンって爆発して、家出しちゃった」
ひしっと抱きついてくるシャルル。
その姿はまるで小さな子どものようで。
「僕、僕、ずっとお姉様にこうやって話を聞いてもらいたかったの」
「良かったな、シャルル」
ヴァイス男爵のもうひとつの手がシャルルの頭に乗せられた。
メージの妻がシャルルとジュディスをシャルルが泊まっている客間へ連れて行ってくれた。
ここはオブリスの大学そばのメージの屋敷。
メージ、ロバート、ヴァイス男爵とその従者が部屋に残った。
「さて、これまでのことと、私が娘のマリアンヌから聞いたことを話そうか」
ジュディスがシャルルと寝かしつけてからメージの部屋にメージの妻に案内されて戻ってきた。
「ジュディス!
マクダウェル公爵家とアイライト公爵家がついてくれれば、カーライル侯爵家やモルテン伯爵家は簡単に手を出せまい。
安心しなさい。
ヴァイス男爵家もジュディスの騎士となり、守ろう。
アトスには明日、知らせる」
ヴァイス男爵はそう言って従者を見た。
従者は頷いて「私は明日に備えて休ませて頂きます」と部屋を退出していった。
「王都のアトスの所へ行ってもらう」
「お爺様!!」
やっとジュディスが祖父に抱きついた。
「ずっとずっと男爵領に行きたかった!
シャルルがたくさん話してくれました。
男爵領の自然の素晴らしさ、お爺様とお婆様と領民のみなさんとの温かい関係。
それから、ロバートとの鉱石の話……。
いい経験をしているのですね。本当にありがとうございます」
「うん、ジュディスはジュディスらしく、やり遂げなさい」
「はい!」
そう返事してからジュディスは首を傾げた。
「……アイライト公爵家って?
オブリスはアイライト公爵領ではありますけど」
ヴァイス男爵がびっくりした顔をした。
「メドジェフ!?
ここでは名乗っていないのか?」
「私は図書館長のメージです」
メージが微笑む。
ロバートが目を丸くした。
「メドジェフ?
前にも……。
先代の王弟!?
メージさんが、アイライト公爵!?」
ロバートがびっくりしたように叫んだ。
「あまり王都にも姿を見せない……。偏屈な引きこもり公爵と言われているがね」
メージがにっこり笑った。
読んで下さり、ありがとうございます。




