20 再びの依頼
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2月の第一水曜日。ジニーの月2回の貴重なお休みの日……なのだが、ロバートはシャルルのお供で、ナイジェル教授とヴァイス男爵とオブリス郊外の川の方に行くとか。
すっかりシャルルに気に入られているロバートの様子にジニーは微笑ましくもあり、少し残念に思ったり。でも、祖父と弟はそこまで長く滞在するわけではない。
最近は図書館にも行けていない。
祖父と弟が大学周辺にいないことがわかっているなら、逆に気にせずに出歩ける。
「雑貨屋のアトラの所に行って、それから図書館のテラスでお昼を食べて、図書館で勉強!
早めに帰ってきて、刺繍でもしようかな」
パン屋の早朝売り子から戻り、朝食を食べながらナオミとダンに『今日はどう過ごすのか?』と聞かれて、そう答えると笑われた。
「ロバートがいてもいなくても、ちゃんとすることをするってのはいいね」
「そんなことで褒められるとは!?
当たり前だと思いますけど」
「うーん。
ロバートとジニー、すごくいいお付き合いをしていると思うけれど、まだ、キスとかしていないのかい?」
ナオミの爆弾発言にダンがお茶を吹いた。
ジニーは目を丸くしてから、赤くなる。
「……はい、そういうことはまだ」
「大事にしなきゃいけないけどさ。
まあ、ロバートも男なんだから、ねぇ」
「俺に話を振るな!」
ダンが慌てている。
ジニーは笑って、でも、まだ顔を赤くしたまま言った。
「なんとなく……その……、ロバートのことは大好きなんですけど、そういうことはちょっと、ちょっとまだ怖いというか……。
でも、抱きついたり、抱きしめてもらったりはしてますよ」
「ふーん、なるほどねえ。
ロバートはジニーを大切にしているわけだ。
これは本物だね」
「本物?
大切って言うなら、私もロバートのことは大切に思ってますっ!」
片付けてからスライスしたパンに半熟ゆで卵を潰して塩コショウと混ぜて挟んだ物とハムと野菜挟んだ物を作らせてもらって半分に切った。それを昼のお弁当にして『一皿』を出たジニーはまっすぐ雑貨屋へ行った。
アトラと、珍しくオーナーがいた。
オーナーがジニーを見るなり立ち上がり言った。
「ジニー!!
頼みたいことが!
前にハンカチを作った家から、君を指名で仕事の依頼がある!」
「私……、そういうのはもうやりたくありません。
それに私の刺繍のデザインというか技術というか、あの時からだいぶ変わりましたし」
「前のことを思い出すか……、少し手抜きをすればいい!」
「手抜きなんて!?
もう他人が作ったとされる物を作りたくないんです」
しかもサーザの手に渡る物で、アンナが作ったとされるのだ。
もう何の思いもないが、やはり気持ちのいいものではない。
「すごく金額をはずんで下さっているんだよ」
オーナーをちらりと見てからアトラがカウンターを出るとジニーの方に来た。
「ジニー、やりたくないんだよね」
ジニーは頷く。
あの時のハンカチで全部おしまいにして、もう関わることはないと、決別した。
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