6 形だけの婚約
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新年が明けてからもう3週間になる。
サーザとマシューはモーリスを訪ねていた。
学園、学院ともに新年の一週間過ぎから新学期が始まっていたが、まだまだ貴族社会、時に女性の方は新年の行事が続いている。
今日はカーライル侯爵家でオフィーリアが身内女性を呼んだお茶会を開いていた。
新年の最初に開かれる王妃のお茶会が終わったこともあり、高位貴族夫人による身内の女性の新年のお茶会が続くのだ。
アンナもエルダもそちらに参加している。
ロイヤー子爵家夫人のマリアンヌはジュディスの付き添いで男爵家に行っているという理由で来ていない。
モルテン伯爵家で待たされている時にマシューが言った。
「王城の王妃のお茶会でルイザ・カンドール伯爵令嬢がエルダに声を掛けて話をしたらしい」
「ルイザ……?
あ、この前、学園でお会いしたかも?」
サーザの脳裏にバルテスの教官室で会った卒業生の女性の姿が浮かんだ。
あの後、卒業生の『ルイザ・カンドール伯爵令嬢』だったらしいとアンナに聞いたのだ。
「どうやら、ジュディスと仲が良かったようだよ。
カンドール嬢」
マシューの言葉に驚くサーザ。
「え? そうなの?」
「ああ、貴族学園の同学年の知り合いに聞いた。
もしかしたら、ジュディスのことを知っているかもしれないな」
ぼそぼそと話をしていたら、モーリスがやって来た。
「やあ、サーザ! マシュー!
久しぶりだな!
新年おめでとう!
エルダは?」
サーザは苦笑した。
「今日は我が家で身内の女性を招いてのお茶会だよ。伯爵夫人も招かれてるだろ!」
「なんだ、それじゃ来れないな。
なら、ジュディスもカーライル侯爵家に?」
「……え?
ジュディスは……、今は、母方の実家の男爵領にいるとか?
モーリス、聞いてないの?」
「あ、ああ、そういえばなんかそんなことを聞いたな。
エルダはジュディスのことを何か言ってるかな?
『私のモーリスを奪って、憎いわ!』とか、なんつって!」
マシューが思いっきり顔を顰めている。
サーザはそれを見て苦笑した。
「モーリス……、どういうこと?
エルダが、ジュディスに……嫉妬するとか?
だって、エルダがこの婚約をまとめたと聞いたよ」
「まとめたというか、お願いされたというか……。
ジュディスはどうでもいいんだ。
エルダが喜んでくれればいい。
ああ、エルダ……。
エルダは清らかで、気高く、まるで女神のようで……、本当に素晴らしいよ。
ジュディスのこともあんなに心配してさ」
「心配?」
「ああ、サーザは断ったんだろう!?
どこも貰い手がないから、モーリス、形だけでもなんとかならないかって」
「え?
モーリスはエルダのこと……」
「ああ、俺はエルダが好きだよ。
とても大切に思っている。
エルダがしたいようにしてやりたい。
今回のことだって、命じられたようにジュディスを引き受けたら、エルダが褒めてくれたよ」
「……ジュディスとの婚約を望んでいないなら、白紙に戻して欲しい」
頭を下げるサーザ、このまま話していたとしても、なんだか通じないような気がしたのだ。
「やだよ。エルダに頼まれたんだ」
「……エルダじゃないと思う。
それを命じたのは母だよ。
カーライル侯爵夫人だ。
10年前のジュディスへの暴力も、エルダの裏に母がいたんだ……」
「……まあ、どうでもいいよ。
エルダは俺に命じてくれた。
ジュディスを懲らしめろ。そして今は、ジュディスと婚約しろってね。
つまり、ジュディスを俺に与えてくれた。
エルダは聖なる存在だからな。
欲の対象としてのジュディスってことだろう。
ジュディスなら……、楽しめると思う」
サーザはその言葉に動揺した。
マシューが話してくれる。
「ジュディスはいないよ。
君がどう聞いているか知らないが、夏に家出して、まだ行方不明だ。
形だけの婚約、書類だけの結婚になるだろう。
そのことは聞いているのか?」
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