2 気持ちが悪い
どうぞよろしくお願いします。
サーザが喘いだ。
「10年前の真相って……。
ジュディスは怖くなって帰ったけど、もう一度、僕達のところに来ようと、1人で屋根裏に戻ってきて……、ドアが閉まった拍子に鍵が壊れたんじゃないの!?」
「ふふっ、ジュディスが強情なのがいけないのよ。
助けを求めずにじっとしていれば凍えるまではいかなかったのに。
あんなに手を固く握りしめて……。死ぬ恐怖を味わったんでしょうね。
……エルダがアンナとモーリスに命じてね。
ずっと屋根裏にいたのよ。
手足を縛って、脅かしてね」
「……ずっと?
じゃあ、僕達が探検している時も!?」
オフィーリアは楽しそうに頷いた。
「そんな……。
じゃあ、僕がエルダの所に行っている間にジュディスはいじめられて、ひどい目に。
それなのに僕は……」
サーザが呆然としている。
「だから、もうあきらめなさい。
サーザも可哀想ね。もっと早く伝えておけばよかったわ。
今更、学園でジュディスを追いかけて、婚約したいと言うなんて思ってもみなかったから。
でも、ありがとうね。
マリアンヌも知らなかったことがわかって。
あの時のマリアンヌの表情、見物だったわ!
10年よ! 10年!
母親なのに娘がされたことを10年も知らずに娘を責め続けていたんですものね」
「そ、そんな……。
ジュディス……。
どんなことになっていてもジュディスを助ける……」
「……モーリスと婚約させたのはこっそりと人知れずジュディスは死んだことにするためよ。
学園を退学して、モルテン伯爵家に嫁いで、不慮の事故で事故死ってことにするの。
それで10年前のこともおしまい。
ロイヤー子爵があのことを恩に着せてうるさかったのよ。
だから、今度はジュディスの名誉を守るため、帰って来られる場所を用意すると言ったら、了承したわ。こちらの意図にも気づかないで!
モンテル伯爵家も同じ考えよ。
ロイヤー子爵に一泡吹かせてやれるって!
ふふふふっ、いないジュディスが嫁に行って死んだと言われても何も言えないでしょうね。
今度はマリアンヌ、どんな顔をするかしら?」
「おい! オフィーリア、やめなさい!」
カーライル公爵があまりに息子が打ちひしがれているのを見てやっと口にした。
「何をやめるの?
本当に殺すわけじゃないし!
学園時代にあなたを誘惑したマリアンヌと私達の大切な嫡男であるサーザに手を出そうとしたジュディス。
身のほどをわからせただけよ!」
オフィーリアの夫の言葉もオフィーリアには届かない。
「オフィーリア!
マリアンヌは何もしていないし、私も彼女が学生の時に可愛いと思って優しくしたぐらいで……。
君を裏切るようなことは何もしていない!」
「……思うだけでも十分な裏切りよ!
私がそばにいるのに!
私がどんなに惨めで苦しい思いをしたか、わからないでしょ!!」
サーザが暗い声で言った。
「エルダは知ってるんですね。
アンナもマシューも知ってるんですか?」
「さあね?
アンナとマシューはどうなのかしらね。分からないわ」
サーザは立ち上がった。
「気持ちが悪い……」
「そうよね! マリアンヌとジュディスの親子は気持ち悪いわよね!」
「……違う。
母上の方がおかしいよ」
「あら! 男爵家なんて平民と同じだと思わない?」
サーザは母であるオフィーリアと父であるエリアスを睨みつけて部屋を飛び出していった。
「サーザ、待ちなさい! 何もするんじゃないぞ!」
エリアスが後ろから叫んだ。
あの時、モーリスやアンナに乗せられてジュディスを貶めるような言葉をつい言ってしまったのは何となく記憶にある。
信じてくれていたのに、ジュディスを簡単に裏切るところを見て聞いて、だから、拒絶したんだ。
そのことに気づかず、心変わりを責める気持ちでジュディスを……。
マシューはもしかして知っていて、だから、あの後からみんなと距離を取るようになり貴族学園ではなく王立学園へ進学したのかもしれない。
彼もまたジュディスと顔を合わせられないと思っていたのかもしれない。
それなのにサーザはジュディスを追いかけて、縋るような責めるような目で見続けた。
「僕も気持ち悪い奴だったな……」
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