1 あきらめなさい
第6章がスタートしました!
どうぞよろしくお願いします。
「だから、モンテル伯爵家の叔父様かモーリスと話をしたいんです!!」
サーザが両親に訴えている。
ここはカーライル侯爵家の執務室。
部屋には侯爵夫妻とサーザしかいない。
「……ジュディス嬢のことか?」
カーライル侯爵が言った。
「そうです!
僕との婚約は家出するほど嫌がったのに、モーリスとは!?
それでジュディスは無事に戻ってきているのですか?」
「もうロイヤー子爵家には関わるな。
モンテル伯爵家の方は考えがあるのだろう」
「まだ戻ってきていない?
だから、ジュディスが了承したわけじゃなく……」
「これ以上騒ぎ大きくするな。
オフィーリアとエルダが事が大きくならないよう、うまく収まるように動いたのだ。
お前の為にな」
「僕のため? どこが!!
僕はもう……、そんなに僕との婚約が嫌なら、僕が他の人と婚約すれば、ジュディスとの婚約が白紙になったとわかると、そうすればジュディスが戻ってくると思って!!
僕は好きでもないアンナと婚約して、もう人生は終わりだと思っています」
「こんな事なら10年前に責任を取って、ジュディスと婚約させてしまえば良かったかな」
カーライル公爵が苦笑し、妻であるオフィーリアを見るがその表情に笑いを引っ込めた。
オフィーリアは厳しい表情をしている。
「サーザ……、そこまであの子に、ジュディスにこだわるのね。
まったく……、あなた達ときたらあんな女に騙されて!
そうよ、ジュディスはまだ戻っていません。
たぶん、もうどこかで野垂れ死んでいるか、どこぞで閉じ込められていかがわしいことでもさせられているのでしょう。
もうあきらめなさい!」
「母上!?」
「あなたの婚約者はアンナでしょう。
子爵令嬢より伯爵令嬢の方が我が家にはふさわしいのです。
侯爵家の跡取りなのだから、そんな初恋とか好きだとか甘っちょろい思いは捨て去りなさい!!」
「は、母上……。
母上はジュディスを嫌って?」
「ええ、私はジュディスもマリアンヌも大嫌いよ。
ね、あなた?」
カーライル公爵がビクッとした。
「ジュディスの母のマリアンヌはヴァイス男爵令嬢でした。
おとなしくてかわいらしいと、胡桃色と言われた少しピンクがかって見える柔らかく明るい茶色の髪。明るく輝く新緑のような緑の瞳。
本当は、ただの優柔不断な少し足りない女のくせに。
あなたも学園で誑かされたひとりだったわね。エリアス」
名を呼ばれたカーライル侯爵が恐る恐る言いかける。
「……昔の学生の時の、一時的な……」
「そう、気の迷いですわね。
でも、マリアンヌは何も疑わず、あなたから掛けられる優しい言葉と誘いに喜んでましたのよ。
だから私は、マリアンヌにもあなたにも釘を刺した」
エリアスが青い顔で頷く。
「そうだ、気の迷いだ。
だから、オフィーリア、君と婚約し、結婚した。
マリアンヌのことなど、それ以来考えてもいない!」
「……それでもマリアンヌの存在がどうしても疎ましかったのです。
嫌いなのに、見張っていないと心配で、目を離すことができないというこの忌々しさ!
だから……友人として優しくしながら、いろいろ吹き込んだの。
ロイヤー子爵は素晴らしい方ねって!
あの子すっかり信じて!
ロイヤー子爵家に嫁に行って!
男爵から子爵だから、ロイヤー子爵は領地持ちではないですけど、家格的には小さな玉の輿と言えるでしょ。
それから時々、娘を持つ母親の先輩としていろいろね。
娘のジュディスもまあマリアンヌそっくりな髪と瞳の色を受け継いでいて……。
勘違いして、侯爵家の嫡男であるサーザ、あなたと一緒にいたいだなんて、とんでもない子に育って!
育ちというより成り上がりの男爵家の血かしらね。
だから、脅かしてやったのよ。
お灸がよく効いて、ジュディスはおとなしくなって、私達の前に現れなくなった。
それにしても10年もマリアンヌが真相を知らなかったことに気づいてびっくりしたわよ!
全く、どこまで抜けてるの!?
母親でしょうに!
確かに女の子はある程度育ったら手を離して大丈夫、嫡男のシャルルに全力を注ぐのよ! とは言ったけれど、それを真に受けてジュディスのことを放任するとはねぇ。本当にバカな女!」
読んで下さり、ありがとうございます。
モンテル伯爵はカーライル侯爵の実の弟になります。
養子に出ています。
なのでモーリスとサーザとエルダは従兄弟関係です。




