4 刺繍の時間
ブックマークが増えてる!!
うれしい!
これからもどうぞよろしくお願いします。
パトーキ伯爵令嬢はジュディスと同じテーブルへ着いた。
「アンナ様、こちらでよろしいの?」
一緒にいる1年生がオロオロしながらアンナ・パトーキ伯爵令嬢の隣に座った。
こちらの1年生も伯爵令嬢だったはず。
下の学年であるが、階級的にはこちらの3人より上になる。
まあ、学園では社交界より身分の格差がその関係性から曖昧になることもあるので、ジュディス達はこのふたりに丁寧に接っすればいいだろう。
刺繍の授業が始まり、今日はハンカチに刺繍をすることになった。
他のテーブルから「あら。婚約者に!」「うふふ、それって!」などの楽しそうな囁き声が聞こえる。
誰も何も言わないのにアンナが宣言する様に言った。
「私、サーザのためにドラゴンを刺しますわ!」
鼻息が荒い。
カーライル家の紋章はドラゴンである。
「素敵ですわ!
婚約も近いのでしょう!」
1年生の伯爵令嬢が頬を染めてアンナを羨ましそうに見る。
「ええ、私達、幼馴染ですから!
急に付き合いを断った薄情な子爵令嬢とは違いますので!」
テーブルの者達がジュディスを見た。
ジュディスは微笑む。
「それはおめでとうございます。
おふたりはとてもお似合いですわ」
「……ふん!
ありがとう」
アンナが少し怯んだようにお礼を言った。
それで、この話はおしまいになるはずだった。
「わあ、ジュディス、上手!
薔薇の花がたくさん!」
アマンダの声が響いた。
アマンダの覗き込んでいるジュディスの手元の刺繍枠の中には色とりどりの薔薇の刺繍が刺してあった。
「褒めてくれてありがとう!
ここに籠を刺して花籠にしようかと!」
「素敵ね!」
1年生の伯爵令嬢が覗きこんでため息をつく。
「お上手です……。
このステッチ、教えて頂けますか?」
「はい、このようにサテンステッチで……」
実際にやって見せるジュディス。
小さなピンクの薔薇が完成する。
「わー、もう形を覚えていらっしゃるの!」
「はい、小さな薔薇をたくさん刺したのもその練習です」
「ね、アンナ様、見て、素敵ですわよ!」
伯爵令嬢とジュディスはアンナを見てびくっとした。
刺繍枠をぎりぎりと握りしめというか握りつぶしそうな力で持つアンナ。
その表情は声を掛けたのを後悔するほどだった。
「あ……、その……、ドラゴンはどんな感じ、かなぁ」
伯爵令嬢が恐る恐る言うと、アンナは刺繍枠をこちらに見せまいとするが、裏側がぐしゃぐしゃなのが見て取れ、ジュディス達は言葉を失くしてしまった。
「え、えーと」
1年生の伯爵令嬢はかわいそうに言葉選びに困っている。
ジュディスが口を開いた。
「あら、素敵な色の刺繍糸!
もしかして、帝国の物ですか!」
伯爵令嬢はほっとしてからうれしそうな表情になった。
「はい、お父様のお土産なのです!
これで、我が家の獅子を刺してプレゼントできたら……」
「見せて下さいます?
あ、いいですね!
獅子はこの部分に注意して下さい。
ここを細く上手に刺すとバランスが良くなりますよ」
「わ、ありがとうございます!
やってみます!!」
読んで下さり、ありがとうございます。




