3 逃げ回る学園生活
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午前中の授業が終わるとジュディスは慌てて、カバンに教科書などを入れ「じゃ、工芸室でね!」と教室を抜け出すように出て行った。
「今日も食堂で食べないのね……。
付き合い悪いんだからっ!」
クラリオーネが呟き、アマンダは心配そうに言った。
「付き合いとかじゃなくて、新年度が始まってから、ずっとあんな感じよ。
ジュディスもかなり疲れてきているんじゃないかと思うの。
心配だわ」
「うーん、でも、本人が頑ななんですもの。
どうしようもないわ」
「……ジュディスの方が被害者でしょう」
「でも、もう10年前とかの話でしょう。
しかも、カーライル侯爵家でちょっと怖い目に遭ったというだけらしいじゃない」
「……怖い目に遭ったのはジュディスよ。
彼女にとっては『ちょっと』『だけ』で済ませられないくらい、怖い思いをしたのかも。
物事に対しての受け取り方や感情には個人差があるわ。
クラリオーネにはそんなに深刻とは思えないかもしれないけれど、ジュディスには今でも忘れられないくらい怖いことだったのかも」
ジュディスは食堂の前で売られているサンドイッチをひとつゲットして、図書館棟の方へ進み、裏口から入って、自習室へ入る。
ここは飲食可で、しかも、お茶が飲み放題。
一番奥の自習室のドアからは見えにくい席に座り、サンドイッチをぱくついてお茶を飲んでいると、数人の3年生がやって来た。
みんな、ジュディスはいない人のように扱ってくれる。
少しだけ、今日の復習をして、早めに自習室を出た。
図書館で本を返して、新しい本を借り、午後の工芸の授業のため工芸室へ移動する。
今日は1~3年の女子だけの合同授業で刺繍だ。
刺繍は嫌いじゃない。
むしろ得意な方かもしれない。
<今日は何を刺そうかな>
そんなことを考えていて、周囲の警戒が疎かになってたのだろう。
学園の校舎に入って、向こうからカーライル侯爵令息とパトーキ伯爵令嬢が来るのに気づくのがわずかに遅れた。
カーライル侯爵令族がジュディスに気づいたようだ。
<やばい!>
ジュディスは回れ右して、走りだし、すぐに角を曲がり、連絡通路を駆け抜け、庭に出ると、茂みの陰に隠れて、そろそろとまた学園の方へ移動を始めた。
<何やってんだか……。
でも、あと1ヶ月、いや、3週間の我慢よ!>
何とか工芸室に無事にたどり着き、アマンダとクラリオーネと同じテーブル席に座ることができた。
「遠回りしてきたの?」
アマンダの言葉に頷くジュディス。
「こそこそと自意識過剰ですわよ!
ジュディス嬢!!」
こちらのテーブルに来るのはさっき見かけたパトーキ伯爵令嬢1年生だ。
ダークブラウンの豊かな髪は丁寧に巻き髪にされていて、気が強そうな赤茶色の瞳が輝いている。
ゴージャスな美少女だ。
「パートキ伯爵令嬢、お久しぶりですわ」
ジュディスは何とか微笑みを作って挨拶した。
彼女も会いたくないと言えば会いたくない人物ではあるが、カーライル侯爵令息よりはまだマシである。
この学園に来るだろうとも思って覚悟していたところもあるし。
パトーキ伯爵家はカーライル侯爵家と仲が良く、伯爵令嬢の兄は王立学院へ進学していた。
それもあり、カーライル侯爵令息は王立学院に行くかもと期待していたところはあったのだが……。
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