5 退学と婚約
どうぞよろしくお願いします。
新年を迎え、一週間経った。
ルイザは貴族学園の方に訪問したいと申し入れ、バルテス先生の都合のいい日時を確認する。
始業式の午後ならと返事が来た。
学園内はひとりでも大丈夫だ。
先生と積もる話もあるのでと、侍女には馬車で待機していてもらい、ひとりで学園の中に入り、バルテス先生の教官室へ向かう。
行き会う生徒達がはっと表情を変え、礼をして通り過ぎてから、後ろで何かばたばたしている。
1年生だと、私のこと……、いえ、知ってる子もいるかもね。そんなことを考えながら、懐かしさと少し寂しさを感じながら廊下を歩いていく。
ドアをノックすると「はい、どうぞ!」と以前と変わらぬ先生の声。
「バルテス先生!
新年のお祝いを申し上げますわ!」
「ルイザ・カンドール!!
こちらこそ、婚約のお祝いと新年のお祝いを!
いやー、君がロバートのお兄さんと婚約するとはね」
「ふふふ、ロバートとはいい生徒会の同志でしたから」
「その様子だと、婚約は君が望んだと考えていいのかな?」
「はい!
私、幸せですわ」
「それは良かった……。
それにしても、今日は悪いことと良いことと、両方ある日だな」
「悪いこと?」
バルテスはルイザを招き入れて、お茶の用意をしながら話を続ける。
「ああ、ジュディス・ロイヤーのこと、覚えているだろう?
彼女は、夏季休暇明けから休学していて、とうとう、今日、退学が正式に決まったんだ。
……大学に行きたいとあんなに熱心に頑張っていたのにな。残念だよ」
「ジュディスはそんなに体調が悪いのですか!?」
バルテスはマグカップを2つ持ってテーブルの方に戻ってくる。
表情が沈んでいる。
「ああ、体調はだいぶ良くなったとのことなんだが……。
まだ親戚の……、母方の祖父の領地と言っていたかな?
そちらで静養しているそうだ。
ただ、その間に婚約が決まったとかで、体力的にも、そちらの準備に専念するそうだ」
「……ジュディス本人が?」
「いや、午前中に父親であるロイヤー子爵が正式に手続きにいらしてね。
年末で休学期間が切れたので、始業式の今日にね」
ルイザは胸がドキドキしてきた。
ロイヤー子爵はジュディスがいないのに、いると嘘をついている。
婚約とは誰と?
「その婚約って、どこの家と?」
バルテス先生の顔がさらに曇った。
「……モンテル伯爵家のモーリスだ。
君とは1年だけ被っていたかな?」
「はい……、私が1年の時に3年生で……。
あら?
カーライル嬢に付きまとって、問題になっていませんでしたっけ?」
「手厳しいな!
あれは……。
君の同級のエルダ・カーライル。それに今1年のサーザ・カーライル、アンナ・パトーキ。モンテル・モーリス。それにジュディスは幼馴染でもあったようだね。
夏の終わりにサーザとアンナが婚約した。
その縁もあって、あのモーリスとジュディスの婚約が整ったと」
バルテス先生はため息をついた。
「……モーリスは、お薦めではないんだがね。
ジュディスは苦労するだろう……。
貴族の結婚となると、本人の意思が言えないこともあることは、わかっているんだが……」
「バルテス先生!
ジュディスは、ロイヤー子爵家にはいません。
その婚約、おかしいですわ!」
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