13 終ったな
この話で第4章は終わりです。
どうぞよろしくお願いします。
「……そして、気を失いかけていた時に、捜してくれてた侯爵家の使用人に助けてもらえた。
でも、お父様に言われたの。
今回のことは、お前が屋根裏にひとりで探検に行って、ドアの鍵が壊れて閉じ込められたことになったって。
何度も私は言ったわ。
あの子達に捕まえられて、閉じ込められたんだって。
でも、私の言葉を聞いてくれる人は誰もいなかったのよ。
アンナとモーリスだけ私が家に帰るとひとりで馬車に乗る直前に、それぞれの家の使用人に連れられて会いに来たわ。
『抵抗しなかったお前が悪い』と父が私に言って、ふたりともほっとした様子で頷いて戻って行った。
サーザは来なかった。
来ても会いたくなかったけどね。
それ以来、暗闇が苦手なの。夢を見てしまうこともある。そんな時は起きた時にひどいと発作のようになってしまって。
夜、この安全ランプの灯りを小さく点けておくのが私のお守りなの。
……不思議なんだけど、アンナもモーリスもマシューもエルダも、もうどうでもいいの。
どっちかと言えば嫌いだけど、だからといって一緒にいるのが嫌とかそこまでじゃなくて。
でも……、サーザだけはもう、関わらないというより、同じ場所に一緒にいたくないって、考えたくもないって思った。
サーザの言葉、今ならあの場の雰囲気で言っちゃった言葉なのかもとも思うけど……。
許せないの。あの時の私が。
もう会いたくもないし、考えたくもないし。
それなのに、サーザのことを考えちゃう。それが惨めだった。
ずっと避けて、会わないように生きてきた。
マシューが王立学院に行ったから、サーザもそっちに行くかと期待してたのよ。
それなのに、貴族学園の方に来て……、私を見て……、待ち伏せして来て……。
それで、逃げ回って、考えたくないのに強制的に考えさせられて、逆に姿を探しちゃって……。
夜、悪夢にうなされて……。
夏季休暇までって頑張った。
家に帰ったら……、サーザから婚約が申し込まれてて、私は嫌だって、大学に行きたいって言ったけど、父も母もやっぱり私の言うことを聞いてくれない……。
もう、いい加減、頭にきて、爆発しちゃってその勢いで家を抜け出して、オブリス行きの特別急行に乗っちゃったってわけ。
で、なんとかとりあえずひとりで生きてみようって。
図書館で試験を受ければ大学に入れるって知って、もう、家も学園も本当に捨てた。
ここからは私ひとりで、したいように生きる」
ジュディスは大きく深呼吸した。
「ジュディスがここにいる理由はわかった。
逃げてきて正解だと思う」
ロバートがゆっくりと言った。
「ありがとう」
「で、今は何を無理してこうなってるの?
ナオミさんが何か無理したって……」
ジュディスは笑った。
「終わりにしたくて。
私、刺繍の仕事もしてるの。
どうやら刺繍が苦手な貴族令嬢のゴースト、みたいで。
今回、依頼してきた令嬢の名前はわからないんだけど、婚約者に贈る物で、縫い取る名はサーザ」
ロバートは目を丸くした。
「それって……」
「ふふっ、私との婚約を取り下げてくれたのを知れたのは良かったけどね。
あ、言っちゃった……。私がそのハンカチの刺繍を刺したことは秘密にしてね。
仕事として取り組んだけれど、できるだけ早く自分の手元から手放したいって思って、ちょっと無理しちゃった……」
「……そうか、けじめって感じ?」
「うん、これを完成させて手放せば、本当に自分の中で終わらせられる気がしたの」
ロバートが横になっているジュディスの頭をそっと撫でてくれた。
「うん、頑張った。
偉いぞ!
もう終わったな。休め」
ジュディスはふふふっと笑ってから、少しとろんとした目でロバートを見上げた。
「また……、うなされたら……、助けてくれる?」
「ああ、助ける」
「うん……」
ジュディスが目を閉じ、寝息を立て始めた。
その寝顔を優しい微笑みで見てから、ロバートは部屋を見回しため息をつく。
「それにしても……、ここは環境が悪すぎる。
せめてもう少し、よく寝られる場所に……」
読んで下さり、ありがとうございます。
ロバート!
ジュディスは今のところ、ここの方がよく寝られるんです。
第5章はジュディスがオブリスで迎える年末年始から始まります。




