12 誰も私に気づかない
前話に引き続き、子ども同士のいじめ的な表現があります。
苦手な方はお気をつけ下さい。
どうぞよろしくお願いします。
ジュディスは抵抗したけれど、モーリスに身体を持ち上げられてしまい、恐怖を覚えて、そこから声を上げられなくなった。
「開いてるー!!」
ドアを開けたアンナがうれしそうにおいでおいでと手招きしている。
物置のようになっていて、いろんなものが布や毛布を掛けて置いてあった。
「不気味ね……」
さすがのアンナも不安気だ。
「こいつがサーザにへばりついているんだろ?
じゃあさ、サーザの本当の気持ちを聞かせてやればいいんじゃないか?」
モーリスの言葉にアンナが目を丸くする。
「すごい! そんなことできるの!?」
「できるさ!
エルダにちゃんと報告してくれよ!
エルダは来ないんだろ?」
「するする!
うん、エルダは向こうで見張りしてるとか?
こっちの味方だよ!」
「まだ縄あるか?」
「あるよ」
「じゃあ、動けないように足も縛ろう」
「わかった」
床に座らせられて、両足を押さえ付けられ縛られた。
そのまま、近くの家具に掛かっていた毛布を引きずり下ろし床に広げて、グルグル巻きにされた。
顔の前が覆われ、苦しい。
そのまま、引きずられる感触がして、どこか壁の方に置かれたと思う。
「声出すなよ。最後まで声を出さないで動かないでいたら、後で助けに来てやる」
真っ暗な中でモーリスの声が聞こえた。
助けに来る?
本当に?
でも、この状態では自分では抜け出せない……。
動くと顔の前の布が密着しそうで、ジュディスは静かにしているしかなかった。
しばらくじっとしていたら、声が聞こえた。
アンナとマシューとサーザ?
なんか言ってるけどまだ遠くてわからない。
ドアを開けたところで「わっ!」とモーリスの大きな声がして「きゃ!」「ひいっ!」「モーリス!」なんて3人の声が聞こえた。
マシューとサーザがいるから、助けてって言ったら助けてもらえるかも。
でも、まだモーリスもアンナもいる……。どうしよう……。
「物の墓場みたいだ……」
マシューの言葉が聞こえた。
「うん、なんだか怖いね」
サーザの声。
「へっ、怖がりだな。
帰っちゃったジュディスと一緒か?
怖がり~」
からかうようなモーリスの声。
「違うよ、サーザは怖がりじゃないもん!
今だってアンナのことを守ってくれてるもん!」
「ああ、僕は怖がりじゃないよ!
ジュディスと一緒にしないでくれ!」
「へえ、サーザはジュディスのことが好きなんだろ?
ずっと付きまとってるもんな」
「え?
違うよ!
その、ジュディスが付きまとってくるんだよ。
ジュディスが僕のことを好きなんだと思う」
「へー、そりゃうざったいな」
「うざったい……?」
「子爵家にしてみれば、侯爵家となら玉の輿だもんな」
「玉の輿?」
「サーザが侯爵家嫡男だから、身分目当てに付きまとってるってことだよ」
「え……」
「そういうの、身分狙いのあさましい女って言うんだっけ?」
「アンナ!
そういうことを言うんじゃない。
ジュディスは侯爵夫人が招待して来ている家の子だよ!」
「……だって、私、ジュディスは嫌い。
サーザを独り占めして、私やエルダに意地悪するんですもの!」
「意地悪?」
「ああ、サーザは気づいてないだろうけど、ジュディスは悪い奴なんだぜ。
だから、エルダにジュディスは嫌われているんだ。
お前もエルダの弟なんだから、ジュディスのこと、本当は嫌いだよな?」
「……ジュディスがそういう子なら……、僕は嫌いになると思う」
サーザの言葉……。
それがサーザの本心。誰も私の言葉を聞いてくれない。
ジュディスの心は捻り潰されみたいに苦しくなり、身体が大きく震えてしまった。
「わっ、何の音!?」
「きゃっ、何? 怖いわ、サーザ!」
「アンナ、こっちに!」
「わー、逃げるなよマシュー」
ばたばた音がしてドアが乱暴にバタンと閉じた音が聞こえた。
しばらくして、ドアの向こうでドアノブをガチャガチャしてる音が一度聞こえた。
ジュディスはしばらくじっとしていたけれど、誰も戻ってこない。
アンナの縛ったロープはそのうち緩んできて、なんとか解くことができた。
手が自由になったので足も解けた。
何とか身体を動かし、顔の前を手で守りながら暴れていたら、毛布が緩んで、汗だくになったけど、毛布から脱出できた。
でも、真っ暗で……。手探りで何とか奥から抜け出して、壁からドアまでたどり着いたけど、ドアは開かなかった。鍵がかかっていた。手探りでドアノブを触るが内鍵がない!
汗をかいていたからか、急に冷えてきて……。死んじゃうかも……。真っ暗で、どこに毛布を置いて来たかわからない。
死んでも、誰も私のことを思い出さないかも。
両親もサーザも……。
両親のことはもうあきらめていたからそれほど思わなかったけど、サーザのことは何があろうと味方でいようと思って、サーザもそうだと思っていた。
死にそう……。このまま死にたくない……。
ジュディスはドアを叩いた。
泣きながら、叩いて「助けて!」と叫んだ。
でも、誰も来ない……。
読んで下さり、ありがとうございます。
次の話で第4章は終わります。




