10 10年前から話せ
ジュディスが、見て、感じたように話が進みます。
どうぞよろしくお願いします。
ジニーが水を飲んで落ち着くとロバートが言った。
「何があった?」
「何って、どこから?」
ロバートは目を細めた。
「どこから始まっているんだ?」
「……10年前から」
「じゃあ、そこから話してみろ」
「……なんで?」
「ジュディスが言ったんだ。
『助けて』って。
俺は助けるために知る権利がある」
「権利って……」
「言いたくないのか?
ずっと苦しんで抱え続ける?」
「それは、嫌……。
せっかく、ロイヤー子爵家を飛び出して、離れて、自由になったのに……」
「……話すと楽になることもあるよ」
ジュディスはとても悲しそうな顔で微笑んだ。
弟のシャルルが生まれてから、ジュディスはひとりでいることが多くなった。
ようやく生まれた大切な跡取りの嫡男。
ジュディスも大切にされてないわけではない。
でも、確実に見てもらえなくなり、確実にジュディスの言葉は両親に、周囲の大人に届かなくなった。
ジュディスはそういうものだとあきらめていった。
自分が娘だから。
いずれ、この家を出る娘だから。
シャルルが生まれて1歳になり、カーライル侯爵家からお誘いがあった。
以前から、カーライル侯爵夫人は自分の子ども達と同じくらいの年頃の子どもがいるということで、友人であるロイヤー子爵夫人を屋敷に呼んでくれることがあった。
そこで、カーライル侯爵家のエルダ、サーザの姉弟、パトーキ伯爵家のマシュー、アンナの兄妹と知り合いになっていた。
少し歳が上になるが、時々モンテル伯爵家のモーリスが来ていたり。
ジュディスはそこで一番仲良くしていたのがサーザだった。
本当に信じ合えると思っていた。何があろうと変わらないと。
今ならわかる。
ジュディスとサーザは性質が少し似ていたところがあり、それでお互い惹かれ合っていたのだと。
サーザは侯爵家嫡男ということで、人にちやほやされるその裏側を見て心を閉ざしがちになっていたのだと思う。
ジュディスも慎重で人をじっと観察するようなところがあった。
姉のエルダがサーザに対して支配的な態度を取っていたこともあり、一歳上のお姉さんとしてもサーザに同情していたこともある。
お互いがそんな中で、この人だけは自分をわかってくれると思って、絆を深めていたのだ。
マリアンヌの妊娠、出産を経て、ほぼ一年振りの新年を迎える身内だけの侯爵家のお泊りイベントにお呼ばれしたロイヤー子爵家の面々はそれぞれに喜び勇んでカーライル侯爵家に出掛けたのだ。
一年以上会わないうちに子ども達の関係はかなり変化していた。
特に親から身分のことやこれからの婚約に向けてなど、いろいろ言われていたのだろう。
アンナからは敵視され、エルダからは無視されたり、身分を弁えなさいと注意された。
それでも、ジュディスが黙って耐えたのは、隣にサーザがいてくれたからだ。
でも、サーザはジュディスが無視され、攻撃されるのに戸惑っていたようだった。
サーザが困っているのをジュディスは感じていた。
ジュディスにしてみれば、両親は頼れないし、サーザと一緒にいたら、アンナとエルダに意地悪されるし……、でも、やっと会えたサーザと離れているという選択肢もなく……。
家族の愛を失って疲弊していたジュディスはサーザといるのを選んだ。
そして、あの夜を迎えた。
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