2 弁当便
どうぞよろしくお願いします。
9月になった。
思ったよりジニーの心は落ち着いていた。
学園は……、ロイヤー子爵家がもし休学届を出したとしても、遅かれ早かれ退学ということになるだろう。
アマンダやクラリオーネ、寮母のミーナ、大学に行きたいと打ち明けたら勉強を見てくれたバルテス先生……。
みんなに何も伝えられないままというのは悲しいけれど、大学に入学できたら、その時は報告できるだろう。
自立したジュディス・ロイヤーとして連絡を取れるはず。
その時に笑って報告できたらいいなと思っている。
<今は……、自分の夢に向かって、頑張るだけ!!>
「はいよ! ジニー! 今日の弁当便!!」
遅い昼食が終わった後、ダンが弁当を4つずつ入れた袋を2つ、カウンターの上に並べ、ジニーにメモを渡した。
「今日はあるんだ!
薬学教室……、アルさんとロブさんですね!
お代も全部済み。
午後4時までにお届け、8個!」
「ああ、届けたら、今日はそのまま図書館で勉強して来ていいぞ!
弁当がこれだけ出るってことは、アルとロブのグループは来ないってことだしな!」
ナオミも笑う。
「ああ!
今日は自分の夕食の時間に帰ってきな!
食べて、風呂に入って、早く休みなさい!」
「ありがとうございます!!
じゃ、カバン取ってきます!」
ジニーが2階へ上がると、ナオミとダンが顔を見合わせる。
「このままで本当にいいのかねぇ。
あの子、頭もいいし、どこぞの高等学校に通っていたんじゃないかと思うんだよね……」
「……本人が決めたことだ。
まあ、結婚させられそうになったというのも嘘ではなさそうだし。
決められた結婚で学べなくなるのが嫌で、飛び出してきたってこともあるかもしれない。
俺達は何も言わずに応援してやろう」
「そうだね。
あの子も本当に困ったら、きっと相談してくれるだろうしね」
少しすると髪を一本の三つ編みに直し、エプロンを外したジニーが肩掛けカバンを掛けて階段を下りてきた。
カウンターの上の弁当の袋を両手にひとつずつ持つ。
「では、行ってきまーす!」
「「いってらっしゃい! 気を付けるんだよ(ぞ)!」」
ナオミとダンに見送られ、定食屋を出発するジニー。
この時間、ナオミと買い出しに行くこともあるので、店頭に顔見知りの店員が出ていることがあり、軽く挨拶をしながら大学に向かって歩いていく。
アルからの弁当の依頼は「やってみようかね」とのナオミの言葉で受け入れてもらえたのだ。
ただ、前日の昼までに注文し、お代はできるだけ前払い。
宅配の場合は4個以上注文すること。
お弁当箱は洗って返却、という条件が付いた。
始めてみると、ジニーが配達に来る姿が目を引いたらしく、他の研究室でも話題になり、アルが研究棟の他の研究室の注文も取りまとめるようになり、週末になると6~10個くらいの弁当の注文があるほどになっている。
注文がない日の方が多いので、特別なお使いみたいな感じで、今日のように帰りに図書館に寄ってきてもいいよと言われるので、ジニーも楽しみにしている。
大学へ入り、研究棟の守衛に挨拶。
今ではすっかり、顔パスだ。
「ジニーちゃん、いらっしゃい!
今日も商売繁盛だね!」
「こんにちは! お邪魔します!」
階段を一生懸命上っていると「重そうだね。手伝おうか!」と声を掛けられた。
「大丈夫です!」と答えつつ、声の主を見て、ジニーは固まった。
知っている人だった。
「……あれ?
ロイヤー嬢!? じゃないよな? 学園……、あれ?」
<生徒会のマクダウェル公爵令息!?
あ、そうか! 大学へ進学されてたんだっ!?>
読んで下さり、ありがとうございます。




