1 刺繍作家!?
第4章が始まります。
どうぞよろしくお願いします。
8月の第3水曜日。
ジニーは図書館の帰りに雑貨屋を訪れていた。
「ジニー! いらっしゃい! 待ってたわ!
この前のハンカチとブックカバー、全部売れた!!」
店員のアトラがうれしそうに挨拶もそこそこに報告してくれる。
「えっ! 本当!! うれしい!!」
「買ってくれた人にどこが気に入ったのか、これからどんなのが欲しいと思うかとか聞いといた!」
「アトラ! ありがとう!!」
「ふふふっ。だって、ジニー、すごく頑張っているから。
応援したくて!」
照れくさそうに言いながら、アトラはカウンターの下から覚書のノートを取り出す。
「えーと、シンプルな一色使いのモチーフが男性が使うのにとてもいい。
他のデザイン、紋章のイメージでできないか?」
「紋章……、貴族の家の紋章かな?
獅子、馬、山羊、ドラゴンとか?」
「そうね。
そこらへんのモチーフが組み合わされてる紋章が多いか……。
それから、名前を入れるの頼めないかって。
これは、次回から注文を取っていいとオーナーが!」
「え!
契約してもらえるってこと!?」
「そうね!
ちょっと詳しくはわからないけれど、すでにできているハンカチに名前だけ入れる依頼とか、材料やモチーフ色指定で依頼があるようなことを想定しているみたい。
おめでとう! 刺繍作家ね!」
「わー!!
注文や依頼を受けて考えて刺すのも楽しそう!!
じゃ、これ今回の分です!」
ジニーはハンカチ5枚、ブックカバー1枚を納めた。
「はい、確かに!
で、これがお預かりしてた前回の売り上げの8割!」
「わー、うれしい!
確かに受け取りました。
次回もよろしくお願いします!」
ジニーが手を振って雑貨店を出て行く。
奥から男性が出てきて、ジニーのハンカチやブックマークを手に取った。
「うん、やはり王都学園で人気のあるモチーフだね。
色使いと細やかなステッチが素晴らしい。
全て私が買い取るよ」
「王都のお店で売るんですか?」
アトラの声に王都への憧れが滲む。
「ああ、前回のも貴族のお嬢さん方から好評でね。
何件か名前を入れて欲しいがどう依頼したらいいかと問い合わせが来ている」
アトラが頷いた。
「じゃあ、もうジニーは立派な刺繍作家デビューですね!」
男性、王都にも雑貨店を経営しているオーナーは少し困った表情をした。
「いや……、作家としての個性や癖を出されるのは困るんだ。
あくまで、刺繍の上手な学生が作った物という感じが受けていて、作家名は出さないという約束で」
ジニーは手芸店でハンカチを6枚購入し、寒色系の刺繍糸を出して見せてもらっていた。
鮮やかな青い糸に、それから明るい緑の糸。
「この色綺麗……」
「この緑の方はジニーの瞳の色ね!」
手芸店の店員、カルネに言われて少し驚く。
「ふふふ、誰にあげるのよ?」
「もう、カルネ!
売り物作ってるの知ってるじゃない!」
「そーね、そうだった!」
アトラとカルネは姉妹だ。時々店番を入れ替わっている……。
だから、二人は今ではすっかりジニーと仲良しだ。
「もう9月!
夏が終わると夏季休みで帰ってた学生達が戻ってきて、もっと若い人が増えて賑やかになるのよ!」
カルネがそう言って笑った。
読んで下さり、ありがとうございます。




