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5 婚約発表

第3章はこの話で終わりです。

どうぞよろしくお願いします。

 次の日、サーザの母オフィーリアのところに、パトーキ伯爵夫人が娘のアンナと息子のマシューを連れて訪れていた。

 パトーキ伯爵夫人の姉が、カーライル侯爵の弟のモンテル伯爵の妻という関係で繋がる遠縁と言えるかどうかという関係であるが、昔から家族ぐるみで仲良くしている家同士である。


「そういえば、サーザの婚約者候補の話は進んでるの?」


 パトーキ伯爵夫人がニコニコと聞いてくる。

 カーライル侯爵夫人であるオフィーリアが軽くため息をついた。


「なかなか……。

 本人に任せるしかないところもありますでしょう?

 そこまで急いでいませんしね。

 マシューの方が早いのではなくて?」

「ふふっ、マシューは心に決めた人がいるのですって。

 すごく優秀なお嬢さんみたいで、大学に行くことが決まったら、教えてくれるとか」

「あらあら、それはロマンチックな話ね!

 同じ王立学院の方かしら?

 うちのサーザにもそんな方がいれば、安心していられるのですけど」

「いえいえ、アンナによると、学園でサーザはもてもてだそうですわ!

 悪い虫がつかないようにアンナが見張っているそうです!

 ご安心を!」

「まあ、おほほ」


 マシューが「アンナの方が悪い虫じゃないといいけどね」と言って立ち上がり、テラスから庭へ出て行ってしまった。

 アンナがサーザをちらちらと見てくる。

 

「あら、マシューの冗談っ!」


 パトーキ伯爵夫人がくすくす笑って見せる。


「そうそう、もうマクダウェル公爵家の長男ダグラス様は婚約を発表されたとか!

 オフィーリアも御存じよね!」

「ええ、カンドール伯爵家の次女でしたっけ。

 ……すごくおめでたい話で。

 うちのメイド達も噂してましたわ!」


 ニュース……、噂……。

 サーザはそのとたんに昨日のロイヤー子爵の言葉を思い出した。


『婚約を白紙に戻すこと、了承しましたので』

『もしかしたら、このことを知ればジュディスもへそを曲げるのをやめて戻ってくるかもしれません』


 ジュディスとサーザの婚約が白紙になったと知らせる方法があった!

 サーザが他の令嬢と婚約したと発表すればいいのだ!


「アンナ……」


 掠れた声でサーザは話し掛けていた。


「はい?

 何でしょう、サーザ!」


 全身でサーザと向き合おうとしてくるアンナ。

 言いたくないが言わなくてはならない。


「アンナ……、僕と正式に婚約してくれない?

 そして、発表しよう……」


 アンナの目が丸くなる、頬が紅潮する。

 

「アンナっ!

 おめでとう!!」


 パトーキ伯爵夫人がアンナの肩を抱きしめ揺すぶり喜んでいる。

 アンナが母である伯爵夫人に感極まって抱きついた。

 伯爵夫人は泣き笑いながらアンナに促す。


「ほら! ちゃんとお返事しないと!!」

「サーザ!!

 アンナはあなたのことをずっと信じていましたわ!

 はい、婚約、喜んでお受け致します!」


 オフィーリアがあっけに取られて息子のサーザを見つめている。

 サーザは全くうれしそうではなく、孤独の中に沈み込んでいくように母には見えた。

 その姿に、10年前、寒さと恐怖で強張って握りしめられていたジュディスの手を思い出した……。

読んで下さり、ありがとうございます。

第4章はジュディス(ジニー)の方のターンです。

これからもお付き合い頂けたらうれしいです。

よろしくお願いします。

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