5 大学図書館
どうぞよろしくお願いします。
お気に入りのワンピースに帽子を被り、肩掛けカバンで古都オブリスの探検に出たジニー。
<どうしよう!! すごく楽し過ぎる!!>
足取りも周囲のお店を眺めながら軽やかに大通りを進んで、大学の図書館に到着した。
「すごい……」
帽子を脱ぎ、図書館を見上げる。
涙が出そうになった。ここに、今、自分が立っていることが信じられないくらいうれしい!
でも、今は! 時間が惜しい!!
ジニーは図書館の中に入り、利用条件や一般の人間でも本を借りられるかなど要綱をじっくり読んだ。
登録手続きをすれば閲覧も貸し出しも、自習室の使用もできるが……、登録には身分証明書提示が必要だ。
実家に連絡は行かないだろうが……。
どうしようかと悩んでいると「あれ? ジニーちゃん?」と声を掛けられた。
『一皿』の常連客であるメージさんだ。お父さんとお祖父ちゃんの間ぐらいな穏やかそうな人である。
「ジニーちゃん、図書館に興味があるなんてうれしいな」
「はい、興味はあるんですけど……。
その、私……」
メージさんは何かに気づいた表情をして「こちらに」とカウンターの方へジニーを誘った。
意を決してジニーは言った。
「あの、登録したことで実家の方に連絡が行ったりすることは……」
やっぱりという顔でメージさんが頷く。
「大丈夫、何もなければ問い合わせはしないよ」
「何も?」
「例えば、貸した本を返してくれない、だね」
「それは大丈夫です!
後、手続きすれば、図書館で勉強しても大丈夫ですか?」
「ああ、そのための図書館だからね。
それに、図書館の登録業務は守秘義務があるから、秘密は守るよ」
ジニーは肩掛けカバンから『ジュディス・ロイヤー』の身分証明書を出した。
16歳の誕生日に新しく登録したもので、写真付きの唯一の手持ちの公式文書である。
学園の学生証もあるのだが、それはもうやめることになるだろうから……。
メージは恭しくそのカードを手に取り、真面目な顔で書類に書き込んだ。
「確認できましたので、この登録カードがあれば、自習室の利用や本の貸し出しが受けれますよ。
一応、使用者に渡す説明の紙もお渡ししておきますね」
メージが図書館の登録証と身分証を並べて渡してくれ、壁に掲示されている要綱の抜粋のような文書をくれた。
「……学園に通っているのでは?」
「はい、今は夏季休暇ですが、私、その……」
「理由は聞きませんし、カードは身分証の名で作成しましたが、私はあなたをジニーちゃん、いや、ジニーさんと呼びたいですよ。
それでいいですか?」
「……はい!
ありがとうございます!!」
「学園だと2年生でしょうか?」
「はい、私、勉強して研究したい分野がありまして。
せっかく、大学のそばで生活できるのだもの。
お金を貯めて、もう一度、この近くの王立学院へ入学し直して、いつか、大学へ入りたいです」
「へ?
そんな回り道をしなくても方法はありますよ。
試験があります」
「え、でも、学園では卒業が決まった成績上位者が大学に入学許可って……」
「それでは王都や大きな都市にいる者しか大学に進学できないでしょう。
地方在住で、近くに高等学校もないような場所から進学希望する人が受けられる、高等学校資格認定試験と大学入学試験があるんですよ。
ジニーさんはもう半分学園で学んでいるのでしょう。
1~2年、独学でも学習を続ければ、その試験を受けることができるのでは?
時々、それぞれの試験対策の講習会などもありますよ」
読んで下さり、ありがとうございます。
「学園?」って聞かれて「はい」って答えたら、貴族だってばれてますよ。
変なところで抜けてるジュディスです……。




