少し長めの序章 9.王都への道中~ステータスの確認~(その1)
スリーダス従士長とカルビー従士が二人して頭を悩ませていた丁度その頃、彼らの悩みの元凶である〝小さな賭博師〟は、馬車の中で寝たふりをしつつ、こっそりと自分のステータスを確認していた。
実家ではステータス確認の時間など取れなかったし、そもそも狭い家の中では、一人になれる空間というものが無かった。怪しまれずにステータス画面を眺める機会など、端から望み得なかったのである。
しかし、こうして騎士たちに護られて王都に向かっている今なら、その機会を作る事ができる。
日中はともかく眠る時には、クリスは他の護衛たちとは別に、馬車の中で寝む事を許されている。一応馬車の中にも護衛はいるが、曲がりなりにもクリスが少女だという事を慮ってか、マントで即席の間仕切りのようなものを設えてくれている。視線を遮る事ぐらいは充分にできた。
見たところ監視の魔道具のようなものも置いてないようだし、何よりこのステータス画面は、他人には見えない仕様になっているようだ。クリス当人が不審な動きをしなければ、気付かれる可能性はまず無いだろう。
――と、まぁそういった次第で、クリスは漸く自分のステータスを検める機会に恵まれたのであるが……
(しっかし……どうにも奇天烈な仕様に思えるねぇ……)
クリスの目の前には、グノア村の教会で現れたのと同じ画面が浮かんでいた。
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名前:クリス(緋牡丹お駒)
種族:人間(転生者)
性別:女
年齢:十
魔 力:60 [<10][魔術師50]
生命力:67 [50] [兵士70]
筋力値:12 [15]
防御値:19 [10]
敏捷値:29 [8]
器用値:29 [7]
知力値:26 [5][魔術師15]
スキル:【剣術】【体術】【投擲術】【火魔法】【木魔法】【光魔法】【闇魔法】
固有スキル:【鉄火場渡世】
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クリスとて、伊達にこちらの世界で十年を過ごしてきたわけではない。スキルとかステータスとかについても基礎的な知識ぐらいは――ほぼ耳学問だが――知っている。
だが、それらの知識に照らし合わせても、自分のステータスは些かどころでなくおかしいような気がするのだ。
(スキルの件も気になるけど……やっぱし、おかしいのはこのステータス値ってやつだよねぇ……)
こちらの世界に生まれ落ちて十年というもの、クリスは自分の身体能力が大人以上だと思った事は――いや、子供たちの間で抜きん出ていると思った事すら一度も無い。なのに――
(……筋力値ってやつを除けば、軒並み大人顔負けじゃないのさ……)
村の大人たちの話を耳にした限りでは、ステータス値というものは、教会とかで特別な儀式を受ける事で――つまりは余分なお布施を払って――初めて判るものらしい。畢竟、一般庶民はそんな数値を知る機会も必要も無いわけで、村の大人連中だって自分のステータス値など知ってはいなかった。
ところが、クリスの目の前に現れたこのステータス画面というのは、随分と親切な設計になっており、疑問を抱いて当該箇所を見つめると、ヘルプ画面が表示されるようになっていた――視線入力である。
そうやって表示させたステータス値の平均値――[]内に示されているのがそうらしい――と、自分のステータス値を較べてみた結果、クリスは前述のような疑問を抱いたわけなのであるが……
「やっとう」:斬り合いや試合の際の掛け声や気合いから、剣術の事を指す。




