少し長めの序章 2.「祝福の儀」と神官による説明(その1)
グノア村はこの近在では一番大きな村で、周辺の小村を纏める中核のような立場にある。なので普段からそれなりの賑わいを見せているのだが、別けてもこの日の賑わいぶりは別格であった。
それというのも今日のこの日は、年に一度の「祝福の儀」が、周辺の――小さくてまともな教会など無い――村々からの参加者を集めて、ここグノア村の教会で執り行なわれているのである。況して今年は例年とは違い、王都にある王国総教会から、特別に手伝いが派遣されているのだ。儀式も盛り上がろうというものである。
余談ついでに説明しておくと、この「祝福の儀」なるものは、教会が所有する鑑定水晶によって各人の素質や適性を読み取って、将来の指針とするというものである。判定された適性に基づいて、今後どの方面に進むか、どのようなスキルを得るべく修練を積むかを決めるので、極めて重要な儀式であると見做されている。本人の素質や適性が或る程度固まってからでないと正確な鑑定は難しいため、押し並べて十歳頃に鑑定を受けるのが普通である。
さて、そんな「祝福の儀」も滞り無く進み、残るは一人を残すのみとなった。
辺境地レック村からの参加者の最後に登場した、小柄だが気の強そうな赤毛の少女。その少女のステータスを鑑定水晶で読み取った神官の顔は、驚愕と喜び、そして再びの驚愕と……次いで困惑へと変じていった。
(……百面相ってやつかい? 教会の坊さんにも、おかしなやつはいんのかねぇ……?)
滅多に見られない神官の、更に滅多に見られない百面相だと思えば……ありがたい気がしないでもないが、それよりはさっさと結果を教えてほしい。
そう思っていたのは件の少女だけではなかったようで、
「……巡察使殿、その子の鑑定結果がどうかしたのですか?」
その神官を護衛してきたと覚しき騎士たちのリーダー――騎士長とでも言うのだろうか――が、痺れを切らしたように問いかけた。
「あ、あぁ……失礼。あまりに予想外の結果だったので、少々取り乱してしまった」
「……予想外?」
聞きようによっては不穏ともとれる発言に、騎士――多分「聖騎士」というやつだろう――の一人が微かに眉を顰める。……ただでさえ色々とややこしい事情のある任務だというのに、これ以上の面倒事は願い下げだ。
「まず……この子は既に【火魔法】と【木魔法】のスキルを得ています」
おぉっと響く――レック村住人以外の――見物人たち。十歳の子供が既にスキルを得ているというのは、無いわけではないがそこそこ珍しい事だ。この子の他にもスキル持ちはいたが、魔法スキルのダブルホルダーというのは、これは近来に無い快挙である。
見物人が沸き返るのも無理はなかったが……惜しむらくは少し気が早かったようだ。
「……その他に、授かったばかりのようでレベルは低いですが、【光魔法】のスキルが確認されました」
――それまでの歓声が嘘のように静まり返る。
【光魔法】の保有者は、例外無く教会に召し上げられ、聖女として働くのが慣わしである……という事ぐらいは彼らも知っていたが、まさか自分たちの目の前で、そんな場面が演じられるとは思ってもみなかった。
これは……近在一統の誉れではないのか?
わぁっと再び――先程に倍する――歓声が沸き上がりそうになったところで、神官の冷徹な台詞がそれを押し止める。
「それと――【闇魔法】も」
――今度こそ一同は凍り付いた。




