少し長めの序章 14.王都への道中~お手並みお披露目~(その2)
「やっ、お疲れ♪」
「……嬢ちゃん、あまり無茶はしねぇでもらいてぇんだがな?」
「何もしないで済んだなら、そうしたけど?」
――理屈でやり込められたスリーダスは、渋い顔で黙るしか無い。どう言い繕ったところで、自分たちの不手際から、護衛対象を危険な目に遭わせたのは事実なのだ。
クリスが姿を現さなければ、危険な目に遭う事は無かった……と、言いたいところだが、それだって所詮は言い逃れに過ぎない。クリスの傍らに護衛を残して、残りで賊を圧倒できていれば問題は無かった筈なのだ。
憖責任感が強いだけに、自責の念に駆られて落ち込むスリーダス。そして、そんな空気を吹き飛ばそうというのか、賊の屍体を検めていたケイリーがクリスの方へ戻って来ると、
「大した手並みだな、お姫様。聖女なんかにするのは惜しいぜ」
――そう言って何かを手渡した。
「ありがと」
ケイリーからクリスの手に戻ったそれは――
「……釘か? そりゃ」
「そ、古釘を研いだもんさ。こんなんでも結構役に立ってくれるんでね」
「あぁ……たった今見せてもらったともよ」
クリスが最初の賊に投げ付けたのは、古釘の先端を鋭く研いだものであった。どうやら手裏剣の代わりらしいが、ほとんど予備動作も無く投げ付け、そして当てて見せた手並みからすると、随分と修練を積んだ技のように見える。……いや、投擲だけでなく、恐らくは態と姿を見せて、賊を自分の間合いまで誘き寄せた手際も、そして――それに続くナイフの一突きも……
「……随分と手慣れた様子に見えたけど」
やはりその点が気になったらしく、小隊長のエンリー聖騎士が問いかけた。
「それなりに場数を踏んでるんでね」
「相手は?」
答えたクリスに間髪入れず問いを重ねたのはスリーダス従士長。こちらの問いにもクリスは直ぐに答を返す……何の気負いも無い様子で。
「ウルフとかゴブリン……オークもいたな。あとは盗賊とか」
「「「「「「………………」」」」」」
さらりと殺人の経験をカミングアウトする十歳の少女に、聖騎士団の面々は無言である。スラム出身のカルビーにしても、初めてはもう少し後だったような気がする。
「こちとら辺地の田舎者だし、ガキはガキなりに護らなきゃならない相手がいるんだ。一々遠慮や気遣いなんかしてたら、辺地じゃ生き残れないんでね」
ゴブリンもオークも盗賊も、敵である事には変わりないだろ?――と言われてしまえば、聖騎士団の面々も返す言葉が無い。
「……ま、今後は僕たち聖騎士団が護る事になるからね。お嬢ちゃんは手を汚す必要は無いよ」
「次からはそうお願いしたいけど――あたし、能く知らないんだけどさぁ、聖女様って、辺地の村とかにも行くんじゃなかったっけ?」
宥めるような口調のエンリー聖騎士をチクリとやり込めたクリスであったが、この問題をこれ以上蒸し返すのは得策でないと感じたのか、やや強引に話題の転換を図る。聖女就任の話が出てからずっと気に懸かっていた事があり、さっきの護衛云々の話でそれを思い出したのだ。




