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少し長めの序章 13.王都への道中~お手並みお披露目~(その1)

殺人に関する描写があります。

 何だかんだで三日以上クリスと旅を続けてきて、その度(ど)外(はず)れっぷりにも慣れてきた……と思っていたエンリー小隊――聖騎士団ではこういう言い方をするらしい――の面々であったが、四日目にしてそれが甘い幻想であった事を思い知らされた。



・・・・・・・・・・



「分隊長っ! 前方に敵っ! 十一騎ーっ!」



 御者・兼・見張りを務めていたケイリーの叫びが切っ掛けとなって、一行は一気に緊迫した空気に包まれた。


 たかが盗賊ごとき、幾らいようと聖騎士団の敵ではない……と、大(おお)見得(みえ)を切りたいのは山々であるが、敵の数は自軍の約二倍、しかも騎馬で襲撃をかけてきている。追い散らすだけならできるだろうが、この先ずっと昼夜を分かたず狙われるというのは好ましくない。せめて人数を半減させて、割に合わないと思わせなければ……という判断の下(もと)、エンリー小隊は盗賊どもの掃討に移った。


 多勢に無勢というハンデはあるし、火矢や魔法による遠距離攻撃は面倒だが……盗賊どもの狙いが金品にある以上、いきなり馬車を吹き飛ばす挙に出るとは考えにくい。なら、頑丈な馬車を盾にすれば、敵の射線を半減させる事ができる。敵の動きを捉えづらくなるという不利益はあるが、それでも攻撃の来る方向を限定できるのなら、戦力差が二倍でもやりようはある。



・・・・・・・・・・



 その自負どおりに、欲を掻いて撤退時期を見誤った盗賊どもを各個撃破し、元の半分以下にまで減った盗賊を片付けようとしていた時の事だった。



「――なっ!?」

「しまったっ!!」

「へっ♪」



 迎撃と殲滅(せんめつ)のために一旦馬車を停めたのが裏目に出たのか、後ろの扉から幼い少女がひょっこり顔を出したかと思うと、ピョコンと馬車から飛び降りたのである。



(ちぃっ! 人数確保のために、タルカーを馬車から降ろしたのが失敗だったっ!)



 馬車の中でじっとしていろ、決して外に出るなと言い聞かせておいたのだが……馬車が停まって剣戟(けんげき)の音が収まった事で、戦闘は済んだと誤解したか……


 ギリギリと歯噛みして駆け戻る従士たちだが、生憎(あいにく)と賊――この時には二人にまで減っていた――の方が馬車に近い。


 幼い少女を人質に取れば、一気に局面を逆転できると気付いたのか、舌(した)嘗(な)めずりした盗賊たちが馬車に駆け寄……ろうとした時、立(た)ち竦(すく)んでいたかのように見えた少女の右手が閃(ひらめ)いたかと思うと――



「ぐわっ!?」



 ――賊の一人が片手で顔を押さえて踏鞴(たたら)を踏んだ。その片手の下からは赤い血の筋が流れている。



「「「「「「「――!?」」」」」」」



 エンリー小隊だけでなく、賊の片割れまでもが駆けるスピードを落としたのとは反対に、少女は目にも留まらぬ速さで賊との距離を詰める。



「「「「「「「――え?」」」」」」」



 ――と、戸(と)惑(まど)う観客(・・)を尻目に、少女は賊の脇を駆け抜けざまに、



「うぐっ!」



 隠し持っていたナイフで賊の肝臓を抉(えぐ)る――正確に。



「「「「「「「……は?」」」」」」」



 間抜け面した観客(・・)たちが呆気にとられているのもものかは、小さな殺人鬼(ク リ ス)は鮮やかに賊の手から剣を奪うと、



「ぐわっ!」



 ――ただ一人残っていた賊にそれを投げ付ける。投擲(とうてき)された剣はまるで命あるかのように宙を飛び、見事に賊の身を貫いた。

 その頃になって漸(ようや)く我に返ったスリーダスが、倒れた賊に留めを刺して……盗賊たちの掃討は終わった。


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